総務省の「電話リレーサービス」ホームページから
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(週刊朝日2021年8月20―27日号より)
(週刊朝日2021年8月20―27日号より)

 年をとると、電話がおっくうになる。話が聞き取りにくかったり、言いたいことがうまく言葉にできなかったり。だが、急ぎ返事がほしいとき、飲食店や病院などの予約で電話しか使えないときは困る。そんなときの支援ツールを紹介する。

【「見える電話」を使いこなそう!支援ツールの一覧はこちら】

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 今年7月から、「電話リレーサービス」(一般財団法人日本財団電話リレーサービス)という新しい電話のしくみが公共インフラとして運用されている。「きこえない人・きこえにくい人」と「きこえる人」の会話を通訳オペレーターが手話または文字と、音声で伝えるサービスだ。

 例えば、病院の診察や検査、飲食店の予約、仕事、学校や塾からの連絡、緊急通報(警察、救急車、消防車、海上保安庁への連絡)などで利用できる。

 宮城県在住の男性は引っ越しで「業者から見積もりを取る」「インターネット回線を引く」ときにサービスを利用した。メールやファクスで申し込んだが、先方から電話で問い合わせを受けたため、電話リレーサービスの文字入力で対応した。

 男性は「仕事中は電話リレーサービスに出られませんが、それでも問い合わせにすぐ返答できるため便利です」と言う。

 海外ではすでに25カ国以上で公的サービスとして普及している。日本でも2013年から8年間、モデル事業をしていた。今回の本格運用から障害者手帳を持たない人も対象となり、診断書(*1)による審査で承認を得られれば利用できる。

 高齢者の場合は、どんな人がこの電話リレーサービスを利用するとよいだろうか。

 加齢による聞こえにくさに対しては、大きな声で話しかければいいわけではない。日本財団電話リレーサービス理事長で国立大学法人筑波技術大学名誉教授(聴覚障害学・医学博士)の大沼直紀さんはこう説明する。

「高齢になると高い音域の子音が聞こえにくかったり、騒音のある場所では音の聞こえがぼやけたり、風呂場などの音が反響する場所では言葉がゆがんで聞こえたりします。つまり、話し相手の声は聞こえても、言葉をうまく聞き取れない状態になります」

 テレビ番組や映画で字幕のほうがわかりやすい、聞き間違えが多い人は、「電話リレーサービスの利用を検討するとよい」と大沼理事長は言う。

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