課題は「電話リレーサービス」を知らない人が多いため、最初に通訳オペレーターが説明をし始めた途端、イタズラや詐欺電話と間違えて切ってしまう人がいることだ。
また、モデル事業時の調査(*2)では、回答者の約4割がクレジットカード会社、通信販売、不動産会社などから電話リレーサービス利用時、手続き(契約、解除、退会など)で必要な本人確認ができないと断られたケースがあった。理由は「個人情報の漏洩(ろうえい)を防ぐため」「第三者のなりすましを防ぐため」などという。
このため、電話リレーサービスの適切な運用を管轄する総務省は、昨年と今春、金融庁と経済産業省に各事業者に対する手続きの普及促進として、「電話リレーサービス利用時の手続きは一般の電話と同様の扱いとする」依頼文書を発出した。両省庁は所轄の業界団体へ同文書を発出したという。
通訳センターを独自で設置し、手話や文字入力での手続きに対応する企業もある。
企業からこのサービス提供を受託する企業の一つプラスヴォイスのコンサルティング事業部・國崎優さんは「近年、クレジットカード会社の場合は、ほぼすべての手続きをこの通訳センターで対応しています。一方、他の業界においては、緊急性の高い連絡しか受け付けていない企業もあります」と説明する。
NTTドコモは相手の通話内容を音声認識によってリアルタイムに文字表示する「みえる電話」サービスを提供している。文字入力を機械音声で伝えることもできる。男女の声を選べる。
埼玉県在住の40代女性は「みえる電話」で美容院の予約、弁当の注文などをしている。これまでは聞こえる家族に頼ることが多かった。「自分ひとりで用事を終えることができ、返事を待たずにすむことはとても快適です」と言う。
このサービスは、同社社員で聴覚障害のある青木典子さん(37)が企画開発した。これまでの人生で電話が必要な場面が多く、不便さや歯がゆさを感じていた。音声認識技術を知り、当該部署への異動願を出し続けた。
開発における課題は、他社のネットワーク基盤からの音声を取り込めないこと。このため、利用者を同社のユーザーに限定せざるを得ない。
サービスが充実して、「電話のバリアフリー」を実現してほしい。(医療ジャーナリスト・福原麻希)
*1 登録審査は「電話利用が困難との記載がある診断書等」で判断している
*2 特定非営利活動法人インフォメーションギャップバスター(伊藤芳浩理事長)の調査(2020年)
※週刊朝日 2021年8月20‐27日号