野球の審判も人間。時には誤審を犯したり、微妙な判定を下してしまうこともある。夏の甲子園でも、“疑惑の判定”がクローズアップされた試合が少なくない。
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1球の判定が、勝敗に大きな影響を及ぼす皮肉な結果を招いたのが、2007年の決勝、佐賀北vs広陵だ。
強豪私立校の野球特待生制度が社会問題化したこの年、公立校の佐賀北が、準々決勝で帝京、準決勝で長崎日大の私立勢を相次いで撃破し、“がばい旋風”を巻き起こした。
だが、決勝戦では、広陵のエース・野村祐輔(広島)の前に7回までわずか1安打に抑えられ、0対4。この時点では、誰もが広陵の勝利を確信したはずだ。
そんな劣勢から、佐賀北が猛反撃に転じたのが8回だった。1死から連打で一、二塁としたあと、辻尭人が四球を選んで満塁。野村が低め一杯に投じた直球、スライダーがいずれもボールと判定され、ストライクゾーンが狭くなったように感じられた。
スタンドからもさわやかイメージの公立校を応援する激しい手拍子が起こるアウェー状態のなか、野村は次打者・井手和馬に対し、カウント3-1から外角低め一杯に“運命の5球目”を投げたが、判定は「ボール!」。捕手・小林誠司(巨人)がミットで3度地面を叩いて悔しがるほど微妙なコースだったが、ボールと判定された以上、どうにもならない。押し出しで1点が入った。
そして、ここから試合は一気にひっくり返る。なおも1死満塁で、3番・副島浩史は、野村のスライダーが真ん中に入ってくるところを見逃さず、左翼席に弾丸ライナーの逆転満塁アーチ。佐賀北は大逆転勝利で、出場49校の頂点に上りつめた。
公立贔屓と取れなくもない疑惑の判定に、試合後、広陵・中井哲之監督は「ストライク・ボールであれはないだろうというのが何球もあった。もう真ん中しか投げられない。少しひど過ぎるんじゃないか。負けた気がしない。言っちゃいけないことはわかっている。でも、今後の高校野球を考えたら……」と不満をあらわにした。
高野連は「審判は絶対的で、不満を言うのは好ましくない」と中井監督を厳重注意したが、その後もファンの間で「準々決勝の帝京のスクイズもセーフだったのではないか?」などと、激論が交わされた。