■センサー選びの注意点

 結局、CO2に反応し、かつアルコールに左右されなかったのは、(4)(7)(10)の3台だった。

「(4)(7)はNDIR方式(非分散赤外線吸収法)と説明書きされています。NDIR方式は、CO2の分子に吸収される赤外線の量から計測します」(同)

 厚労省も「NDIRセンサーが推奨される」と文書で薦めている。CO2センサーの老舗メーカー「T&D」が開発する機器も、NDIR方式だ。同社営業部の担当者も「NDIR方式はCO2そのものの濃度を計測しているので、データの信頼性がある」という。

 ただ、(4)(7)の数値は、基準値より低めだ。

「2台は機器の精度が低いのでしょう。最も精度が高かったのは(10)で、基準値との開きが小さかった。説明にはありませんが、動きから考えるとNDIR方式です。12台のうち、信頼できるのはこの1台だけでした。説明だけではNDIR方式なのか、そうでないのかわかりにくいセンサーが多いのも問題です」(石垣特任准教授)

 東京理科大学の倉渕隆教授(空気調和・衛生工学会副会長)も昨年、センサーの精度を実験した。ネットで購入した3千円から6万円の12台をすでに濃度がわかっている複数の標準ガスのなかで測定すると、4台は大きな誤差が出たが、残りは大きな誤差がなかった(グラフ2)。

「1万円台でも誤差が小さいセンサーもありました。ただ、測定原理の説明が乏しく、メーカーの公式サイトもなければ、説明書もないセンサーは、誤差が大きかった」(倉渕教授)

 倉渕教授もNDIR方式を薦めるが、注意点もある。

「原理的に測定結果の変動が避けられません。自動の校正機能や校正ボタンのあるものがいい」(同)

 ちなみに、今回検証したセンサーのほとんどが中国で製造、販売されていた。生活経済ジャーナリスト柏木理佳さんは言う。

「流行の商品は、偽物やすぐに壊れる不良品も多く出回ります。複数のECサイトの口コミを見たり、家電量販店で売られているかどうかを目安にしたりするといいでしょう。ECサイトが出荷元となる商品を選ぶと、もし不良品だった場合も、返品の手続きがスムーズです」

 CO2センサーを自宅で使いたい人も多いだろう。正確に測れているか、家庭での確認方法を前出の石垣特任准教授に教えてもらった。

「屋外に出して400ppm程度になるか。その後、屋内で数値が上がるか確認してください」

 それでもわかりにくければ?

「センサーの近くで息を吹きかけてください。人の呼気は3万ppmとされ、濃度が大きく上昇するはずです。また、アルコールを付けた手を近づけても反応すれば、さまざまなガスからCO2の相当値しか出せない電気方式だとわかります」(石垣特任准教授)

(ライター・井上有紀子)

AERA 2021年8月30日号

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