石垣特任准教授による市販のCO2センサー検証の様子(撮影/井上有紀子)
石垣特任准教授による市販のCO2センサー検証の様子(撮影/井上有紀子)
AERA 2021年8月30日号より
AERA 2021年8月30日号より

 換気の目安として重宝されるCO2センサー。だが、JISなどの規格もなく、CO2測定の精度が低い製品が、ネット通販などで多数市場に流通している。見分け方はあるのか。AERA 2021年8月30日号の記事から。

【図】1万円以下のCO2センサーは誤差が大きい?

*  *  *

 新型コロナウイルス感染対策として、換気は重要といわれる。だが、窓を開閉しても、実際のところ、換気がどの程度できているかわからない。

 そんなとき、換気の目安になるのが二酸化炭素(CO2)濃度測定器(以下、CO2センサー)だ。スマホくらいの大きさで、画面には濃度が常時表示される。最近は、飲食店や企業に置かれるようになった。

「どのタイミングで換気すればいいか、数字でわかるのがいい。サイズも小さくて、店で置きやすい、と店から聞いています」

 神奈川県産業労働局総務室の担当者は言う。神奈川県は昨年末から、希望する飲食店にセンサーを無償で貸し出している。「東亜産業」(東京都)のセンサーで、家電量販店に相談して決めた。買い取りも可能で、7割以上が購入しているという。

 電気通信大学の石垣陽特任准教授(情報工学)は言う。

「新型コロナウイルスが感染拡大する条件の一つが、換気の悪い密閉空間です。CO2は目に見えませんが、人の呼気により室内のCO2濃度が上昇します。この濃度が高ければ、換気できていないサインと考えられます」

■測れているか不明

 ちなみに、屋外の濃度は約400ppmだ。数人が室内に集まると、1千ppmを超える。集中力や意思決定パフォーマンスが落ちはじめ、2700ppm以上になると、倦怠感や頭痛が起きやすくなるといわれている。厚生労働省は、濃度1千ppm(0.1%)以下であれば「換気の悪い空間に当てはまらない」としている。

 政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長は、折に触れて感染のリバウンドを防ぐ策として、「しっかりしたCO2のモニタリングをするとか」と話している。

 だが、「しっかりした」とは何か。実はここに、CO2センサー利用の課題があった。厚労省生活衛生課の担当者は話す。

「JIS(日本産業規格)などの規格もないから、指標がないのです」

 コロナ禍になって広まった商品だけに、国民生活センターには「測れているのかよくわからない」という相談も寄せられる。

「コロナ禍で、ネット通販でCO2センサーは明らかに増えました。ですが、CO2センサーといいながら、実際はCO2を疑似的に表示するにすぎない悪質なセンサーもあります。同じ環境で置いていても数値がまったく違うのです」(石垣特任准教授)

次のページ