不確かなCO2センサーの値に惑わされたケースも。石垣特任准教授によると、ある高齢者施設では、クラスターが起きたのを機に、CO2センサーを使い始めた。だが、それは相当値しか出せず、職員は感染対策の参考に「良かれと思って使っていたのに」と残念がったという。

■測定の精度極めて低い

 そこで、AERAは石垣特任准教授の協力のもと、石垣特任准教授がネットで購入したり譲り受けたりしたCO2センサー12台の精度を検証した。商品名は「二酸化炭素濃度計」「空気品質モニター」など。購入当時、すべて5千円以下の品々だ。ECサイトを見ると、商品写真のキャッチフレーズは英語でもその下の文字はドイツ語だったり、「さまざまな種類のガスのインテリジェントな検出」「弱い電流をより正確にキャプチャし」と日本語が妙なものもある。

 実験はこうだ。水槽に全センサーを入れ、CO2を注入。水槽内の空気をファンでかき混ぜ、それぞれのセンサーの動きをみた。同じく水槽に入れた「T&D」(長野県)、「CHC」(東京都)の産業用センサーが出すCO2濃度を基準値とした。

 CO2ガスを注入すると、それぞれのセンサーの数値が動きだす。基準となるセンサーは数千ppmを超えた。だが、(1)(3)(5)(6)(8)(9)(11)(12)の8台は数値があまり変わらなかった(グラフ1)。(2)は数値が高すぎるので、故障の可能性がある。結局、基準となるセンサーに近いのは、(4)(7)(10)の3台だけだ。

「基準値と開きがあるが、3台はCO2に反応しています。CO2数値がほとんど動かないものは、CO2以外の物質を測定しているとみられる。でも、結論を出すのはまだ。CO2に反応しているか確認する方法がもう一つある」(石垣特任准教授)

 石垣特任准教授は消毒用アルコールスプレーを吹きかけた手を水槽に入れた。基準となるセンサーは500ppmだったが、他の8台の値が3~12倍に跳ね上がり、計測の限界近くに達して警報が鳴り始めた。この8台は、CO2に反応しなかった8台だった。

「8台は、アルコールを含めた雑ガスに反応するセンサーです。内蔵されている半導体がガスに反応して、ガスの濃度を出します。CO2濃度を直接測定するのではなく、他のガスの値から相当値を出すので、CO2濃度測定の精度は著しく低い」(同)

 8台の中には「TVOC(総揮発性有機化合物)高性能」などの説明があった。こうしたセンサーは半導体などの電気式、eCO2方式と呼ばれる。

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