まず、大会前の検査では、作新学院の選手の陽性が判明(大会の定める「集団感染ではなく、個別感染とされるケース」だったため、無事大会に参加することができた)。だが、大会前に全選手の陰性が確認された宮崎商では、大会期間中の14日に選手1人が発熱。再度PCR検査を受けたところ、この選手を含む13人の陽性が判明した。集団感染となり、智弁和歌山との初戦を辞退。さらに愛工大名電を下し、甲子園初勝利を上げた東北学院も、ベンチ入り選手1人の感染が判明し、松商学園と対戦予定だった2回戦を辞退した。
大会本部は、期間中に新型コロナウイルス感染対策ガイドラインを改定。チーム内に感染者が出て、集団ではなく個別感染と判断された場合の選手登録変更について、当初は「初戦の前日午前9時まで」だった規定を、「当該試合開始予定時刻の2時間前まで」とした。2戦目以降も登録選手の変更を認め、可能な限りいい状態でプレーできるルールへと変えた。
東北学院の事例は集団感染ではなく、個別感染にあたるため、上記のルールに沿って登録選手を入れ替えての2回戦出場も可能だった。だが、学校の「感染者の特定を避けるため」の意向もあり、辞退を決断。出場校の下した判断は尊重されるべきで、そこに異論はないが、大会本部が最大限の体制、ルールを整えたことは、知られるべきだと思う。
炎天下で、ゆとりがあるとは言えないスケジュールで大会が進行することなどから、「京セラドームなどのドーム球場でやるべきでは」「甲子園球場一カ所ではなく、関西近郊の他球場なども交えて分散開催して、日程を緩和すべきでは」との声は、毎年のように上がる。
たしかに今年は悪天候が続き、屋根のない球場での一カ所開催することによって、日程が消化し切れないという、かねてから懸念されていたリスクをひしひしと感じる大会になった。だが、高校球児たちが強く持つ「聖地・甲子園」への憧れを尊重し、コロナ関連のルールの大会中の再整備、大会が31日以降にも延びた場合は、「プロ野球・阪神戦との同日開催」を予定するなど、大会本部は最大限の努力を続けた。
19日に予定していた第1試合が降雨ノーゲーム、第2試合を含めて順延となった際には、天候回復を待って、第3、4試合を消化するなど、新たな対応も図った今夏は、今後も続いていく大会の新たな試金石となったのでは間違いない。
最後に、朝日新聞社社長・中村史郎氏が閉会式で発した言葉を紹介したい。
「私たちは今大会の課題を検証して今後に生かすとともに、これからもこの甲子園という夢の舞台を全力で支えていきます。来年は多くの皆さんが球場で応援できるようになることを祈っています。また甲子園でお会いしましょう」
また甲子園で会うために。異例尽くしの夏を次につなげてほしい。