余談だが、地方を問わず多くの高校が学校の長期休暇などを利用して、“関西遠征”を敢行するのは、ハイレベルなチームと対戦し腕を磨くことはもちろん、チーム間のつながりを強固にし、甲子園出場時に頼れる先を増やす意味合いも多分にある。

 先述の通り、今夏は大会史上初めて、4強を近畿勢が独占。“地方勢最後の砦”として準々決勝の第3試合を戦った明徳義塾の馬淵史郎監督は、智弁学園に無念のサヨナラ負けを喫した後のオンライン取材で、こう語っている。

「第一に、これだけ雨で延びたら我々は練習するところがないんですよ。地元の学校は、自分のところの雨天練習場でやれると思いますが。地方から来ている学校は、雨が降ったときに思うように練習会場が確保できない」

 直後に「もう一つは近畿のレベルが高い。(近畿の)高校野球のレベルが高くなっている」と相手の強さを称えているが、雨天時の練習場確保への苦労と無念は偽らざる本音だろう。

 特に今夏は大会開幕前から、出場校の多くが宿を構える大阪府内に緊急事態宣言が発出。大会期間中の20日からは甲子園球場のある兵庫県全域にも宣言が出された(これに伴い、22日の試合から入場者を部員やその家族などに限定。吹奏楽部やチアリーダーなどの生徒は入場不可に)。宣言の関係で県を跨いでの来訪者の公共施設の利用が断られたり、他校の施設を借りようにも学校関係者以外の者の立ち入りが難しかったりと、例年以上に確保が難しい状況だった。馬淵監督率いる明徳義塾も、指揮官自身の人脈の広さ、関西近郊の硬式クラブチームとのつながりを多く持っているはずだ。それらを駆使してもなお、厳しい状況だったことを感じさせる会見だった。

 これだけの長雨は当然大会本部にとっても予想外だったことは間違いないが、今後地域制による大会期間中の練習環境の不公平感を緩和する意味でも、悪天候時の練習場こそ割り当てを行う必要があるのではないだろうか。

 今大会は春に続き、新型コロナウイルス対策を施しながらの戦いとなった。今春のセンバツでは、大会前、敗退後に出場校関係者が行うPCR検査はすべて陰性。感染対策に成功した上で大会を終えたが、感染力の強い変異株が猛威を奮っている今夏は、一筋縄ではいかなかった。

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“聖地”への憧れの気持ちは尊重すべき?