イライラしたり、怒って感情的になってしまうことは日常で頻繁にあり、生きていくうえで決して避けられないものです。

 そんなとき、怒りの原因となった相手に対して、こちらの怒りをあらわにすることで、なんとなく自分の中の感情がおさまるのではないかという気がしてしまうものです。しかし、怒りをあらわにする行為がかえって自分の怒りを膨らませてしまうのなら意味がありません。

 すでに起きてしまったことを、時間を巻き戻してなかったことにすることは不可能なわけです。それならば、その感情にいつまでも固執しているのは、時間的にも精神的にも損だと思いませんか?

■怒るようなことがあったら、一呼吸して、少しだけ考えない時間をつくる

 さらに、誰かに愚痴るなど、ほかの人に気持ちを吐き出すことで気を紛らわそうとすることも、結局はその怒りが根本にある行動なわけですから、向き合っているのと似たようなものです。

 これらの行動も、かえって怒りを膨らませているといえるでしょう。

 これは、「怒りを我慢しろ」「自分の中にため込んでおけ」という意味ではありません。

 そうではなく、怒りを何らかの形で発散させようとする前に、一呼吸して、少しだけ怒りについて考えない時間をつくってみてほしいのです。

 たったそれだけで、自分の中の感情は、非常にコントロールしやすいものに変化します。

 怒るようなことがあった後で、冷静でいられる人は、決して多くはないでしょう。
 だからといって、頭に血が上り、感情的になった状態のまま行動しても、ろくなことはありません。「自分にとって」得策ではないのです。

 私は、子どもにカッとなってしまいそうなとき、少しの間目を閉じて、何度か大きく深呼吸をするよう気をつけています。

 日頃から意識して、あえて感情からほんの数分間だけ目をそらし、 気持ちをコントロールする感覚を鍛えてみてはどうでしょうか。

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杉山奈津子

杉山奈津子

杉山奈津子(すぎやま・なつこ) 1982年、静岡県生まれ。東京大学薬学部卒業後、うつによりしばらく実家で休養。厚生労働省管轄医療財団勤務を経て、現在、講演・執筆など医療の啓発活動に努める。1児の母。著書に『偏差値29から東大に合格した私の超独学勉強法』『偏差値29でも東大に合格できた! 「捨てる」記憶術』『「うつ」と上手につきあう本 少しずつ、ゆっくりと元気になるヒント』など。ツイッターのアカウントは@suginat

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