18年9月、中学3年の時に亡くなった鹿児島市の男子生徒の仏壇。母親によると、息子は中学ではバスケットボールに打ち込んでいたという(photo 遺族提供)
18年9月、中学3年の時に亡くなった鹿児島市の男子生徒の仏壇。母親によると、息子は中学ではバスケットボールに打ち込んでいたという(photo 遺族提供)

 この教師は報告書などがもとで戒告処分となり、22年9月から現場を離れ半年間の研修を受けているという。だが、戒告は処罰の中でも最も軽い罰だ。

 母親は、この教師が形だけの処分や研修で終えるのではなく、謝罪と反省の気持ちを持ってほしいと言う。

「罪を認め、息子の霊前で心から謝罪してほしい。大人が子どもを殺すという、一般社会でやってはいけないことを学校の先生がやっていいわけがありません」

■指導死に関する法律はなし 学校は向き合おうとしない

 実際、生徒の死に「指導」が影響したと認められたケースでも、有形の暴力以外で教師が罰せられることはまずない。教育評論家の武田さんは、そもそも指導による自殺には加害者を罰する法律がないからだと指摘する。

「いじめであれば、いじめ防止対策推進法によって調査検証と再発防止が義務づけられています。ところが、指導死に関する法律はありません。学校や教育委員会は騒ぎ立てると自分の首を絞めることになりかねないので、真剣に向き合おうとはしません。教師を変えるためにも、自殺以外でも指導による重大事態はいじめと同じように調査検証し、必要に応じて加害者を処罰する法律をつくる必要があります」

 大東文化大学の山本准教授は、多忙な教師の労働環境の改善が最優先としたうえで、適切な教育のあり方を教師が学ぶことが重要だと語る。

「キーワードになるのが『子ども理解』です。例えば子どもがテストでカンニングをした際、頭ごなしに叱責・処罰するのではなく、その子の声に耳を傾けなぜカンニングをするに至ったか理解したうえで指導・支援することが大切。『ホワイトペダゴジー』と呼ばれる教職倫理にかなった教授法です」

 さらに、教師がホワイトペダゴジーを実践できる教員同士の関係性作りや、教師が困った時に相談できる支援体制を構築することも必要になると言う。

「こうした理念を実現するためには、大変な時間と労力がかかります。しかし、学校からダークペダゴジーを駆逐するには、教育の現場だけでなく国を挙げ行っていく必要があります」

 遺族の思いは、不適切な指導により、傷ついたり亡くなったりする子どもをなくすことだ。

暮らしとモノ班 for promotion
Amazon スマイルSALEは9月4日まで。よりお得にするためのポイントやおすすめ目玉商品を紹介♪
次のページ