先進国の中だけではなく、日本は世界で唯一の法律による「強制的夫婦同姓」の国なのです。
欧米でも、昔は夫の姓に変えることが一般的でした。
1979年に採択された国連の「女性差別撤廃条約」が変化のきっかけになりました。世界的に「女性が結婚したら男性の姓に合わせなければならないのは、おかしい」と思われるようになったのです。
それほど昔のことではないですよね。でも、ここから世界は変わり始めました。
同姓を法律で義務付けていたドイツでは、連邦憲法裁判所が91年「違憲」と判断し、93年に別姓を認める法改正がなされました。オーストリア、スイスも変わりました。
アジアでは、タイが2005年「選択的夫婦別姓」に、トルコは02年、妻について夫と妻の姓をつなげる「結合姓」を認めました。
アメリカやイギリス、フランスなどは、法的には結婚後の姓に関して決まりがないので、最近は夫婦別姓を選ぶ人が増えました。また、これらの国々の植民地だったアジア・アフリカの国々は、宗主国の夫婦別姓をそのまま取り入れた国が多かったようです。
国連の女性差別撤廃委員会は、03年と09年、日本の民法の夫婦同姓規定について「差別的だ」と批判し、選択的夫婦別姓制度の導入を求めました。
というような世界のことを話しても、夫婦同姓にこだわる人は、「世界は関係ない、これは日本の伝統なんだ」と言ったりします。その発言を聞くたびに、いつからの伝統と考えているのだろうと僕は思います。
断言しますが、江戸時代までは、そんな伝統はありません。一部の武士の例を出して、「日本は昔からそうだった」と言っている人をネットで見ましたが、それはたった一頭の白いトラを見つけて、「すべてのトラは白い!」と言うことと同じです。
そもそも、一般庶民は名字を許されたり勝手に名乗ったりした人もいましたが、名前だけの人も多く、武士は結婚しても、妻は実家の姓を名乗るのが一般的でした。こんなことは、少し調べればすぐに分かることです。数頭の白いトラを見つけたからと言って、すべてのトラの色を変えることはできないのです。
多くの国民が姓を持つことが認められた1870(明治3)年でも、政府は妻には結婚後も実家の姓を名乗るように指示しています。そして、1898(明治31)年に施行された明治民法が「家族は同じ家の姓を名乗る」と規定したのです。