でも、将来にわたって、本当に「強制的夫婦同姓」が自分に関係ないかどうかは誰にも分かりません。自分が男でも、スタベッキさんのような場合もあるし、すでに夫婦同姓を選択していても、自分の子供や孫がぶつかるかもしれないし、結婚してなくても子供がいなくても、友人や親戚の子供が直面するかもしれません。

 そのために、今、どうしたらいいかと考えるのは、人間の大切な能力、想像力です。

 スタベッキさん。「親の都合による不利益を将来生まれてくる子に背負わせていいものか」と書かれていますが、(この気持ちはよく分かりますが)子供が生まれる前に、まずは、夫婦関係が大切です。生まれてくる子供のために、二人の関係がギクシャクしたら、それこそ本末転倒です。

「結婚と姓、そして家族について、私はどう向き合っていくべき」とも書かれていますが、スタベッキさんは、今、ちゃんと向き合っていると思います。

 僕のアドバイスは、「二人が納得しているのなら、とりあえず事実婚で始めてみる」というものです。

 子供ができた時のために、「今決めておく必要はあると考えています」と書かれていますが、今、これだという決定的な案が浮かぶとはあまり思えません。

 世の中には、いろんな形で「強制的夫婦同姓」を拒否しているカップルがいます。いろんな形を知ることはスタベッキさん夫婦にとって役に立つと思いますし、いろいろと二人の考えが変わっていくかもしれません。なにより、時代が変わるかもしれません。未来なんて誰にも分からないんですから。

 スタベッキさんと同じ問題を抱えて、うんうんと試行錯誤しているカップルは多いと思います。納得できないまま、夫の姓にした女性も多いと思います。内心、名字を変えた妻に対して申し訳ないと思っている男性も少なくないと思います。

 スタベッキさんとパートナーは、今、時代と格闘しているのです。

 その戦いを、僕は応援します。

■本連載の書籍化第3弾!『鴻上尚史のますますほがらか人生相談』が発売中です!

暮らしとモノ班 for promotion
大谷翔平選手の好感度の高さに企業もメロメロ!どんな企業と契約している?