本連載の書籍化第3弾!『鴻上尚史のますますほがらか人生相談』が発売中です!
本連載の書籍化第3弾!『鴻上尚史のますますほがらか人生相談』が発売中です!

 ですから、1898年からの伝統だというのなら、分かります。でも、僕の考えだと、それは「伝統」ではなく、120年ほど昔の「社会制度」です。

 また、「夫婦別姓を認めると家庭が崩壊する」と語る人もいます。海外でももちろん、同姓を選んだ夫婦はいます。別姓にしたら崩壊すると言う以上、「夫婦別姓の夫婦の離婚率と、同姓を選択した夫婦の離婚率」のデータがないと断定できません。でも、そんな調査は見たことがありません。

 だいいち、日本の離婚率は、2019年のデータだと34.8%です。三組に一組が離婚しています。これは世界の統計の中だと、特別上位でもなく、極端な下位でもありません(統計を取る国の数で動くので、正確に何位とは言えないので)。

 夫婦別姓だと家庭が崩壊する、一体感が持てないというのなら、世界で唯一の強制的夫婦同姓のわが国の離婚率は極端に低いはずです。でも、そうではありません。強制的夫婦同姓を主張する人は疑問に思わないんでしょうか。

 どちらかに決めるんだから強制じゃない、選択しているという、食事中だったらごはん粒を噴き出しそうな意見をネットで堂々と言っている人もいます。夫の姓を選ぶ割合は、2015年のデータで96%です。これで夫婦の自由な選択だとは言えません。

 子供の名字が親と違うのは可哀相というのは、本末転倒の話でしょう。現状、強制的夫婦同姓だから、親と子供の名字が違うことが、一般的じゃないというだけです。

「選択的夫婦別姓」になれば、それは当り前になります。

 というか、そもそも、「選択的」なわけです。

 別姓になったら家庭が崩壊すると本当に信じている人は、話し合って同姓にすればいいし、スタベッキさんの彼女のようにそれは嫌だという人は別姓にすればいいだけです。つまりは、大きなお世話です。夫婦がどんな名字を選ぶかは、当人同士の問題なんだからほっといてちょうだい、というだけのことです。

 と書きながら、この原稿にも烈火のごとく怒る人がいます。それはもう、宗教的情熱だと思います。「夫婦同姓は誰がなんと言おうと、事実がどうであろうと、日本文化の根本。変えてはいけない」という宗教的信念です。自分の信仰しか認めない態度からは、何も生まれないと思います。

暮らしとモノ班 for promotion
大人のリカちゃん遊び「リカ活」が人気!ついにポージング自由自在なモデルも
次のページ
鴻上さんも失望した2021年6月の最高裁判決