死因の一つとしてよく耳にする「心不全」は、病名ではなく、さまざまな心臓病を患った後に心臓機能が低下した状態をさす。超高齢社会で患者は急増しており、注意しなければならない。
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心不全というと心臓病の一種だと認識している人が多い。しかし、心不全は、ある特定の心臓病の名前ではない。
「さまざまな心臓病を患った人が、その後、心臓の機能が低下して、日常生活に支障をきたすような状態になることを心不全と言います」
そう話すのは、日本心不全学会理事長で九州大学病院循環器内科教授の筒井裕之医師だ。
通常、心不全は生活習慣の改善や薬物療法によりいったん回復するが、年を経るとだんだん状態が悪くなる場合があり、生命を縮めることもある。推定患者数は120万人で、年間8万人が心不全で死亡している。
「高齢者が長生きできるようになったことで、増えている病気ということもできます。そのことによって患者数が年々増えている注意すべき病気になっていることは、一般の人にはまだまだ認識されていないと思います」(筒井医師)
よく死亡記事などで見かける、死因として使われる“心不全”は、以前は医師が死亡診断書を書くうえで便宜上使ってきたという時代もあった。何らかの他の病気で亡くなった場合に、最終的には心臓が停止して亡くなるため、直接の死因が特定できない場合などに使ってきたようだ。しかし、現在、心不全の定義は冒頭で説明したとおりだ。
■心不全を起こす四つの病気とは
心不全を引き起こす病気は、大きく分けると四つある。
一つ目は、心臓に栄養を送る冠動脈に動脈硬化が起こり狭くなったり詰まったりする狭心症や心筋梗塞など、虚血性心疾患と言われる心臓の血管の病気で、冠動脈疾患ともいう。このケースがもっとも多い。
二つ目は、高血圧が長く続くことにより、心臓から血液を送り出すための心臓の圧が高くなって心臓の筋肉に肥大が起こり、動きが悪くなる場合だ。