クラウディア・シファー(GettyImages)
クラウディア・シファー(GettyImages)

 有名人以外、「パンドラ文書」は逃亡中のカルト指導者とその信者、泥棒政治家とその家族、ネオナチ、判事と検事の殺害を勧誘した罪で有罪判決を受けたミネラルウォーター販売業者、逃亡中の小児性愛者の大富豪、テロ資金提供者などの金融取引も明らかにした。

 ICIJはオフショア金融制度を調査し始めたのは約2012年だった。当時、シンガポールと英領バージン諸島にある専門業者の2社から流出した250万の電子ファイルなどを分析し、タックスヘイブンに会社を設立した独裁者の家族、医者、詐欺師などについても報道した。

 それから2016年の「パナマ文書」と2017年の「パラダイス文書」という調査報道で隠れ金融取引や賄賂などに光を当てた。2016年から世界中の政府は、パナマ文書の直接的な結果として、13億6,000万ドル以上の裏金と罰金を回収した。ICIJの集計では、政府からの公式回答によって確認できた回収資金のみをカウントしている。

 ICIJはこれまでの報道で得たノウハウを生かしたが、「パンドラ文書」は前回の報道と違うのだ。内部文書は一社ではなく、14社に属していたので、一社の会社のやり方の代わりに、国際的なシステムの仕方を理解することができる。電子ファイルを読み解いてみると、豊かな顧客は単なる出発点であることがわかる。いわゆる「イネーブラ」、その顧客を手助けする銀行や法律事務所、金融アドバイザーや会計士などという様々な人物の役割、相関図なども明らかになる。

 今回の報道はオフショア金融業界の変遷と最新トレンドも報告した。例えば、米国とその同盟国は、小国が汚職や犯罪に結びついた資金や資産の流れを許していると非難している。しかし、パンドラ文書は米国自体がいかに隠された富の行き先となっているかを明らかにしている。

◆ジャーナリズムの歴史で最大のコラボ

 また、「パンドラ文書」はジャーナリズムの歴史で最大のコラボレーションだった。データを収入したICIJがわかったのは国際的なチームがないと、この国際的、複雑なシステムを取材することができないということだ。

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