私は書いて埋めることで満足していたのではないか。「たくさん書いた」という作業自体に満足感を得ていたのかもしれない。面接官の反応を見るうちに、わかってきたのです。
エントリーシートの目的は、私に興味を持ってもらうこと。面接に呼んで、話がしたいと思ってもらうことです。そのきっかけなのだから、この紙にすべてを書きこんでしまうのではなく、会って話すことを楽しみにしてもらえる“余白”を残したほうがいい、と考えました。
それからは、エントリーシートに書くのは、アピールしたい話のキャッチフレーズと、簡単な説明のみ。「これって、どういう意味?」「このエピソードを詳しく、聞かせて」と相手がもっと質問しないとわからないように“情報の寸止め”をしてみました。
読んだ人に「すごい」「文章が上手い」と思われなくてもいい。「なんだかおもしろそうだな」「不思議なことを言うなあ」で構わない。相手に一瞬「ん?」と立ち止まってもらったり、興味を持ってもらうことからコミュニケーションは始まる。そう気づきました。
■初対面で自然に距離を縮める話題
いまでも、コミュニケーションの“余白”は大切にしています。特に初対面の方と会話をするとき。「私のことをわかってもらいたい」「親しくなりたい」という気持ちがあっても、その想いは半分くらいに抑えるようにしています。
逆の立場で考えても、相手に初対面でぐいぐいと自分の話をされたら、少し距離を保とうと半歩引いてしまいます。だからこそ、最初から自分の話を積極的にするのではなく、まずは相手の話を聞く。
初対面の方と距離を縮めようとするとき、最初にする会話は、好きな映画やテレビ番組、マンガ、本、ゲームなど趣味性の高い話題にします。パーソナルなことでありながら、どこまで自分を出すかは相手にゆだねられる話題なので、どなたでも話しやすく、会話が広がったり深まったりもしやすい印象があります。
好きな映画の話から相手の生活パターンが垣間見えたり、休日の過ごし方や家族構成の話題になったりすることも。ただ、とにもかくにも、まずは「私はあなたの話を聞きたい」ということを態度で示します。