川田裕美さん(撮影/写真部・加藤夏子)
川田裕美さん(撮影/写真部・加藤夏子)

 ですから、私のほうからいきなり「私は『魔女の宅急便』が好きで。生まれて初めて映画館で観た作品で、父に連れて行ってもらったからで……」と自分の話をしたりはしません。相手の話を聞いていて、もしジブリの話が出たら、相手が話し終わった後に、「実は私も……」というふうにキャッチボールを楽しみます。

 基本は「川田さんは、何が好きなの?」と興味を持ってもらってから話しはじめるようにしています。

■本心の“素敵”を少しだけ、がポイント

 人によっては、質問をしても、会話が弾まなかったり、歯切れよい回答を得られないケースもあると思います。

「聞かれることが苦手なタイプなのかな」と思ったら、次の話題に移らずに、いったん、聞くことをやめて、ちょっと意識を違うところに向けるようにします。

 とはいえ、全然難しいことではなくて、たとえば「ネクタイの柄、とても素敵ですね」「キレイにネイルケアをされているんですね」というふうに、相手の服装や持ち物などでパッと目についた「いいな」と思うことを伝えてみます。そのときもお世辞ではなく、本当に素敵だと思ったことに、ほんのひと言ふれるイメージです。

 この“少しだけ”というのも大事なポイント。

 本心としては、どこがどんなふうに素敵なのか、とか、もっとたくさんの言葉で伝えたくなってしまうのですが、関係性が深まっていないうちに、熱いトークで褒められると、相手は引いてしまいかねないからです。

 会話に乗り気ではないと感じたら、こちらから話すのをやめ、ただ隣の席に座っているだけ。短い時間のやりとりだけで、急速にぎゅっと距離を縮めようと思わなくていいのです。相手を自分のペースに無理に引き込もうとすると、必ずひずみが出てしまいます。 縁があれば、仲良くなれるタイミングはきっときます。相手も、自分のペースを大事にしてくれているな、と感じれば、少しずつ心を開いてくれると思います。

 人間関係において「焦らないこと」は、私が大切にしていることの一つです。

(構成/猪俣奈央子)

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