さすが選挙通の発想である。確かに衆院選自民党の総裁選ほど興奮できなかった。マスメディアの報道は主要政党に偏らざるを得ず、他にどれほど興味深い候補者がいても目にとまらない。だが本書で畠山さんは、華やかな2世3世候補者だけでなく、地盤も看板もカバンもなし、政策も「え、コレ?」と思うような候補者まで同じ視点で取材する。それによって「選挙」の本質に迫っていくのだ。なぜ畠山さんは書き手としてこういう「眼」を獲得できたのか?

「父は新日本製鉄(現・日本製鉄)名古屋製鉄所に勤めていました。地元の友だちとは仲良くしていたけど、地域のお祭りになると社宅に住む僕らは呼んでもらえない。いずれ転勤する人間だと思われていたんです。それならいつかここじゃない場所、僕をフラットに見てくれる土地に行きたいと思い続け、東京の大学に進んだけれど結局除籍。両親とも高学歴じゃないし、エリートではなく地べたからモノを見る生まれ育ちでしたね」

 フリーライターになると今度は記者扱いされず、記者会見にも呼ばれない。世の中は一番下から見るものだと思って、自ら扉を叩き続けた。

「だから選挙でも、世の中から相手にされない人たちにすごく共感します。その人たちが世の中心で活躍する姿を見てみたいと思うんです」

 取材費が足りなければ肉体労働も厭(いと)わない。そんな“地べた系”フリーライターの次なるターゲットは、日本とも関係の深い2022年のフィリピン大統領選挙だという。(ライター・千葉望)

AERA 2021年12月27日号

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