AERAで連載中の「この人この本」では、いま読んでおくべき一冊を取り上げ、そこに込めた思いや舞台裏を著者にインタビュー。
この記事の写真をすべて見る『コロナ時代の選挙漫遊記』は、都知事選挙、各地の県知事・市長選挙、衆院補欠選挙、参院再選挙など、コロナ禍の2020年3月から21年8月までに行われた15の選挙に足を運び、できる限り多くの候補者に接触し、どこまでもフラットな視線で取材したルポ。マスメディアとは異なる視線は、選挙に参加する価値を改めて伝えてくれる。著者である畠山理仁さんに、同著にかける思いを聞いた。
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畠山理仁さん(48)の前作『黙殺』は、「泡沫(ほうまつ)候補」といわれる無名候補者たちの真剣な戦いを描いた力作だった。私はこの本を読んで、「選挙」を見直し、もっと真剣に考えて投票しなければと思ったものだ。そして今度は『コロナ時代の選挙漫遊記』である。日頃畠山さんのTwitterを読み、あちこちまめに取材に出かけていることは知っていた。先日の衆議院議員選挙でも取材に走り回った。パワフルな人なのだ。ちなみに衆院選で畠山さんが投票したのは東京8区。れいわ新選組の山本太郎氏が一時立候補すると発表し、それを取り下げた結果、大いに盛り上がって、自民党のベテラン石原伸晃氏が敗れ、立憲民主党の吉田晴美氏が当選した選挙区である。
「山本さんはいっそ枝野(幸男)さんが出た埼玉5区から出ればよかったのにねえ。これ言ったらさんざん怒られたんですけど言うだけならタダですから」
さらりとすごいことを言う、とびっくりしていると、
「だってそうなっても枝野さんは負けませんから。全国的な話題になって投票率が上がり、結果的に枝野応援団が頑張って当選する。れいわも票を集めて比例区で議席が増えたかもしれない。騒ぎを起こして投票率を上げるくらい野党が頑張らないとね。自民党の総裁選挙を見ると、見せ方がうまいでしょう?」