0対0の7回1死一塁で打席に立った村上は、フルカウントからガンケルの内角低めの際どいコースの直球を見送ったが、橘高淳球審の判定は「ストライク!」。スタートを切った一塁走者・山田も二塁タッチアウトになり、三振併殺でスリーアウトチェンジになった。

 四球と思って一塁に歩きかけた村上は、あっけにとられたような表情で橘高球審のほうを振り向くと、阪神バッテリーがベンチに引き揚げたあとも、首を傾げながら「ウソ~」と推測される言葉を口にして、ごねまくっていた。

 さすがに歴戦を積んだベテラン審判相手では、肝っ玉の太さだけでは太刀打ちできなかったが、来季以降、球界を代表する強打者としての実績を年々積み上げていけば、かつての“王ボール”や“長嶋ボール”同様、“村上ボール”が生まれる期待も十分だ。

 30歳になった村上がどんな“称号”で呼ばれるか、興味は尽きない。(文・久保田龍雄)

●プロフィール
久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍プロ野球B級ニュース事件簿2021」(野球文明叢書)。

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