AERA2022年10月31日号より
AERA2022年10月31日号より

 返済の見込みが立たなくなった時、「自己破産」という手段もある。そうすれば本人に返済義務はなくなるが、連帯保証人(原則、父か母)か保証人(原則、4親等以内)が債務義務を負う。女性の連帯保証人は父親、保証人は叔父だった。

 女性は4人きょうだいで、全員が奨学金を借りている。連帯保証人はいずれも父親で、父親はいとこの奨学金の保証人にもなっていて、総額で1400万円近い借金を背負う。

「家族に迷惑かけるくらいだったら、死んででも何とかするしかないって思ってました」

■明るい未来が見えない

 結局、昨年3月に退職した。

 今は失業手当をもらいながら、職業訓練校に通い就活に励む。奨学金は、月々の返還額を少なくする減額返還を利用し、毎月約6千円を返済している。

 残高は約363万円。返済が終わる頃には、50歳が目の前だ。

「先が遠いです」

 と嘆息する。

 奨学金の返済に関しては、SNSなどで<借りた金を返すのは当然>など、借りた人への「自己責任論」が上がっている。これについて女性は、

「奨学金を遊ぶお金に使っていたら、自分のせいだと思います。だけど私を含め多くの人は、奨学金で遊んだことなんか一回もないです」

 そもそも、奨学金は憲法第26条及び教育基本法第4条第3項に基づき、経済的理由によって修学に困難がある学生に対し、教育の機会均等及び人材育成の観点から経済的支援を行う、重要な教育政策だ。

 だが、女性は、奨学金を借りたことで教育の平等性がなくなっているという。逆に不平等が降りかかり、貧困を再生産していると。

「明るい未来が見えません」

 そんな言葉を口にした。

 女性には結婚を考えているパートナーがいる。子どもは大好きだが、現実を前にした時、子どもをほしいという気持ちは全くなくなった。「子どもは無理」と言う。

「自分の奨学金さえ返せていないのに、子どもの学費なんて無理です。そうかといって、子どもに奨学金を借りさせて、私みたいになってほしくないです」

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