■次の世代のために

 女性は6月、若者の労働問題などに取り組むNPO法人「POSSE」のメンバーらで構成する「奨学金帳消しプロジェクト」に加わった。若者たちが、今の奨学金制度を自分たちが主体となって変えるべく立ち上げたプロジェクトだ。女性がプロジェクトに参加したのは、自分のためだけではない。根底にあるのは「将来の子どもたちのため」という強い思いだ。

「ただ勉強がしたいだけなのに、どうして進学して何百万円もの借金を背負うことになるのか。教員をしている時も、同じような生徒を何人も見てきました。これはもう、どうにかしないといけない思いがあります」

 目指すのは、奨学金の返済に追われることなく自由に勉強を続けて人生を歩める社会だ。

 女性は言った。

「次の世代に、少しでも明るい未来をつくってあげたい」

(編集部・野村昌二)

AERA 2022年10月31日号より抜粋

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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