年に200日以上、琵琶湖に潜る黒川琉伊さんの見事なイラスト
年に200日以上、琵琶湖に潜る黒川琉伊さんの見事なイラスト

「中学生になって、クラシックだけではなくジャズピアノを練習しています。ポップスも弾けるようになってステージで演奏したいです。作曲はまず思いついたメロディーを書きとめ、ハーモニーを一つずつ確認しながら積み上げていくので、完成したときの喜びが大きい」(美音さん)

 夢はNHK朝ドラの曲を作ることだという。

 若き環境活動家も生まれている。この7月に琵琶湖に生息する50種の魚を観察し、200色の色鉛筆で鮮やかに描いた絵図鑑『はじめてのびわこの魚』を出版した黒川琉伊(るい)さん(14)だ。テレビで活躍するさかなクンをモジって、周囲から「こさかなクン」と呼ばれている魚好きだ。

 きっかけは2歳のときに見たアニメ「スイスイ!フィジー!」。興味を見せた息子に「本物の魚を見せたい」と、母親の雅世さんが琵琶湖博物館に連れていくと「目の色を変えて喜んだ」(雅世さん)という。毎日のように博物館に通ううちに、展示しているすべての魚の名前を覚えてしまった。

 小学2年生のとき、「琵琶湖を戻す会」が主催する外来魚駆除大会(琵琶湖の外来種を釣るイベント)に優勝した景品で大型の水槽をもらい、琵琶湖の固有種を飼い始めたことで魚への興味がさらに増し、知識を深めていく。

 小4で「琵琶湖まで30秒」の家に引っ越すと、琵琶湖通いが日課に。夏は素潜りして魚を観察し、採取。冬でも胴長をはいて水路などの魚を採る。現在は約20種、数百匹の琵琶湖の魚を飼い、朝4時起きで世話し、琵琶湖で魚採りをしてから登校するのが日課だ。

 琉伊さんが絵図鑑の出版を決意したのは「琵琶湖のゴミ」がきっかけだった。

「琵琶湖の鳥に釣り糸が絡まっている姿を見て、琵琶湖を守りたいと言いだした。将来の夢として“琵琶湖を守る仕事に就きたい”と琉伊は言っています。それならば得意の絵を使って、その気持ちを伝えることができるのではとアドバイスしたら1年がかりで魚の絵を描き、本を完成させました。子供が興味を持ったことを応援し続けることができたのは母として誇れることです」(雅世さん)

 今回紹介した4人に共通するのは、子供が興味を持ったことを親がひたすら応援したこと。才能を開花させる最大の秘訣なのかもしれない。(本誌・鈴木裕也)

週刊朝日  2022年10月7日号