英才採用を導入した理由は、国を挙げて育成される中国や韓国の棋士に勝つためだという。

「第1号で採用された仲邑菫(すみれ)さんが今ではトップ棋士に成長し、英才採用は成功している。先を読む力、記憶力、集中力に加え、経験がものをいう大局観も優れている。幼くして囲碁に必要な才能すべてを備えているのが怜央さんの強さの秘密です」(石倉さん)

 プロデビュー戦でどのような囲碁を打つか、注目だ。

 怜央さんよりさらに若い、7歳のときに「孫正義育英財団」の財団生に選ばれたのが春山侑輝(ゆうき)さん(11)だ。未来を創る高い志と異能を持った若者を支援する目的で、ソフトバンクグループの孫正義氏が作った財団で、侑輝さんは最年少(当時)で合格した。

 まだ歩行器を使っていたころから本が好きで、他のおもちゃには見向きもせず、動物や昆虫の図鑑を眺めていたという。そんな姿を見た母親は図書館に侑輝さんを連れていき、好きな本をどんどん読ませたという。その中で古生物図鑑が特に気に入り、そこから微生物や細菌、人体の不思議に関する専門書を次々と読むようになる。ウイルスや免疫などミクロの世界への興味から「生物学者になりたい」と言いだしたのは4歳のころだった。

 そんな侑輝さんと財団の出会いはノーベル賞を受賞した山中伸弥教授への憧れからだ。小学1年生で財団の選考を受けたのは、山中教授が財団の理事を務めていたから。合格するのは650人中50人程度という難関を突破して見事、最年少財団生となった。

 昨年からは東大大学院で実験のノウハウを学び、今年からシェアラボで二酸化炭素を吸収するシアノバクテリアを用いた光合成をするタイルの研究・実験を進めており、先日その試作品を完成させたばかり。今後は実用化を目指して研究を進めるという。

 侑輝さんは言う。

「光合成するタイルのアイデアは小学3年生のころ、テレビで温暖化ガスの問題を取り上げるニュースを見て思いつきました。アイデアが具体的になったのは小4のとき。初めはシアノバクテリアの塗料を作ることを考えていたのですが、財団生の人と話してタイルにすることにしました。工場から排出される二酸化炭素から酸素を生成し、世界の二酸化炭素削減に貢献したいです」

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