18年から僕が監督になった仙台育英野球部は、地域の皆さんと感動を分かち合う、という理念、目的を掲げてスタートしました。これが系列中学の監督のときからの理念で、それがなかったら勝利の価値がない、ということです。

 そのためには、まず、僕らの活動が誠実じゃないといけない。そして、災害があれば清掃活動に出向くとか、少なくとも地域のコミュニティーに関わり合いを持っていく、お互い顔がわかる人間関係を構築していくということだと思っていて、そういうことをやり続けてきました。

 勝利至上主義ではないけど、勝利主義でないといけません。部活動は学校生活の中で、成果を出すことを学ぶ場です。何かの成果を出したいと思ったら、仮説を立て、計画し、実行し、検証します。そこで実証されるか、あるいは、もう一度、仮説を立てるところに戻らないといけないか。そういうことを学ぶには勝利主義じゃないといけない。成果と向き合わないといけないんです。努力とか過程がフォーカスされてしまったら、学びにならない。取り組みが良かった、とマルにしてたら、学びが薄っぺらくなってしまうんです。

──連覇を目指しますか?

(次に勝つのが)自分たちであれば言うことないですけど、東北のどこかが優勝したら、僕たちの今回の優勝の価値がさらに高まると思うんです。

 甲子園から帰ってきて秋の宮城県大会の抽選会があって、会長からあいさつしてくれと言われ、君たちにもできる、という話をしました。

「ウチが優勝すると思ってた? 思ってないでしょ。でもウチが優勝したという事実がある。どう思う?」と聞いて、「誰だって、できるじゃん」と言うと、会場の皆はメチャクチャうなずいてましたね(笑)。中でも東北高校のキャプテンが一番うなずいてたかな(笑)。そこで「いい顔してるね。いいね」と言ったんです。

 東北地方の野球の第二章が始まった、ってことですよ。チャンスは広がったと思います。

(聞き手 ノンフィクションライター・渡辺勘郎)

週刊朝日  2022年9月23・30日合併号

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