旧統一教会が関連するイベントで、手を振る参加者ら/2019年10月6日、愛知県常滑市
旧統一教会が関連するイベントで、手を振る参加者ら/2019年10月6日、愛知県常滑市
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 安倍晋三元首相を銃撃した山上徹也容疑者の「母親が入信した旧統一教会を恨んでいた」という供述から、「宗教2世」の注目が集まっている。子どもの頃は逃げ出せず、大人になっても社会に適応できない人もいる。そんな宗教2世たちを救うためには何が必要なのか。AERA 2022年9月5日号の記事を紹介する。

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 旧統一教会の2世で関東地方に住む20代後半の男性は、8年前に脱会した。

「母のおなかにいるときから、賛美歌とみ言葉を聞いてきた。今も、幼い頃に教会のクリスマス会でゲームをしたことを思い出すと心が和む。信仰を捨てることは、自分のアイデンティティーを捨てることだった。その苦しみは、今も続いている」

 そう話し、涙をこらえる。「神の子」として育てられ、大好きだった野球は「教会に通えなくなる」と続けさせてもらえず、好きな子への思いも抑え込んだ幼少期。父親が暴力をふるう人だったこともあり、自尊心が保てず、小学校は不登校に。中学校ではいじめに遭い、高校は数カ月で中退。生き方を模索して海外を放浪した。

 少しずつ教団に疑問を抱くようになっていたが、それでも、1人で渡った海外で男性がすがったのは旧統一教会の教義だった。ノートに「孤独だ」と書きなぐりながら、一方で「(旧統一教会が教えるように)自分を迫害し、理解しない人間を許そう」と唱え続けたという。

 けれど、一向に人生は良くならない。すべてを「悪霊が悪さをしたからだ」と言って祈りを続けている母親の姿に、

「両親は自分たちのしたことへの振り返りが一切ない。ああ、これ以上は無理だと思った」

 と男性は脱会を決意し、家を出た。だが、今でも一般社会との距離感に悩み、人間関係への自信も持てずにいるという。

■まずはガイドライン

 子どもの頃は逃げたくても逃げ出せず、成人して以降は脱会したとしても社会生活にうまく適応できない2世たち。救うためには何が必要なのだろうか。

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古田真梨子

古田真梨子

AERA記者。朝日新聞社入社後、福島→横浜→東京社会部→週刊朝日編集部を経て現職。 途中、休職して南インド・ベンガル―ルに渡り、家族とともに3年半を過ごしました。 京都出身。中高保健体育教員免許。2児の子育て中。

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