AERA 2022年9月4日号より

「そういう『他の世界』も持つ若手が増えているため、職場での役職は下でも、果たしてそう捉えていいのか、と戸惑う意識もあると思います」(同)

 いつからこうなったのか。転換点は「2016年卒」だという。

 ポイントは、仕事の負荷の中でも「関係負荷」と呼ばれる上司や先輩との人間関係だ。例えば、「上司に叱られる」ことや「厳しい指示を受ける」ことが15年卒以前の若手の成長実感にはプラスにもマイナスにも作用しなかったのが、16年卒以降は明確にマイナスと認識されるようになったという。

「趣旨や目的が不明瞭な指示もNGです。若手には大きなストレスになります」(同)

 では、なぜ16年卒以降なのか。古屋さんは端的に「法律が変わったから」だと指摘する。15年に施行された若者雇用促進法(青少年の雇用の促進等に関する法律)によって、採用時に平均残業時間や産休育休の性別取得率などの開示を企業が課されるようになった。

AERA 2022年9月4日号より

「今の学生に聞くと、『残業時間は月30時間ぐらいが目途ですかね』みたいなことを言います。そういう学生に、以前はそういう情報は開示されていなかったと言うと、『どうやって就活していたんですか』と驚く反応が返ってきます。職場環境に対するアンテナが劇的に敏感になり、それが確保されていることを前提に会社を選ぶようになりました」(同)

 ほかにも19年施行の働き方改革関連法や、20年から順次施行されているパワハラ防止法(改正労働施策総合推進法)、さらにはSNSの普及も相まって職場の「見える化」が進み、大幅な職場環境の改善につながった。(編集部・渡辺豪)

AERA 2022年9月5日号より抜粋

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