家族はそれぞれ孤立して、会話もあまりなかったと言います。
「自室の片づけは各自の担当です。私は片づけが苦手なのもあるけど、母が過干渉だったので、物をいっぱい積み上げて、『ここからは入って来るな!』ってバリケードにしていました」
自分にはまだ、向き合わなきゃいけない部分が残っている。それはわかっていました。
家庭力アッププロジェクトは知人のつながりで知っていたという彼女。でも、自分は独身だから関係ないと思っていたそうです。そこへコロナ禍。テレワークが増えて、もう一度片づけに目が向きました。
「年の離れた弟が多感な10代のとき、私は彼を逃げ場のない実家に残して、自分だけ家を出たんです。汚部屋と家族問題をプロジェクトの説明の中で聞いたとき、悪感がよみがえって心がざわつきました。ひとごとじゃない、私も同じような問題を抱えていると思いました」
片づけをやり切ると決めたのは、彼女の誕生日でした。
参加を決めてから1回目の講座の日までは、不用品を部屋から出す期間。彼女はプロジェクトの同期もびっくりの猛スピードでこれをやりました。
「プロジェクトには営業職でハードに働きながら子育てしているような忙しい女性がいっぱい。それに比べたら私には時間がある。自分、やらなかったら本当にクズじゃんと思って。言い訳する要素が消えました」
いったん腹をくくると完璧主義な彼女は、1日20分は必ず、不用品を家から出す時間を作りました。
転機は、プロジェクトがまだ前半のうちに訪れました。
「部屋の写真を撮る課題が衝撃的でした。目を背けてきた自分の内面を見せつけられるんです。私の部屋、物がありすぎて後ろに下がれないから、全体が撮れないんですよ。何かをどかさないと収納は開かないし。写真のほとんどがアップなのはそういう理由なんです」
“閲覧注意”と題した写真が仲間から次々とアップされる中、「自分が一番ヤバい」と思いつつ何の加工もぜずに投稿を続けました。