床置きを一掃し、「同じ部屋」を感じさせるのはカーテンだけ。テレワークもしやすくなった/After
床置きを一掃し、「同じ部屋」を感じさせるのはカーテンだけ。テレワークもしやすくなった/After

 片づけの習慣化に関する講座には、まさに「目からうろこ」でした。

「片づけって作業を分解できるんですね。物を仕分ける、捨てる、整理する、動線にそって収納する、見直すとか。これまでは全部1回でばっちり仕上げるものと思い込んでいました。分割すれば余裕でできる。ああ、なるほどって、目の前がクリアになったんです」

 母が必死で片づける姿を見て、「あんなに完璧にはできないから無理」とどこかで諦めていた彼女は、頭の中の「母」の感性が、自分に大きく影響していたと気づいたと言います。方向性を定めたら、途中経過も受け入れることができた。母から受け継いだ「繊細さ」は良いほうに生かして、彼女は片づけをやり切りました。

「片づけに関して、母は私にネガティブな影響も与えました。でも母が愛情を満足に受けられない環境で育ったのも知っていて。責任感からの必死さや過干渉だし、いつも支えてくれるありがたい存在です。親の影響って強いですね。そういうのも含めて、全部を知ることができた機会でした」

 片づけ問題がクリアになると人生を動かす元気が出ました。

 汚部屋時代はインテリアとか想像もつかなかったけど、住みたい部屋を考えるうちに家具が自分好みじゃないと気がつきました。

「いっそ、引っ越しだと思い立ちまして。ごみも収集日以外出せないし。仕事は繁忙期だったけど、引っ越しは予定より1時間早く終わり、2日後には段ボールも部屋になく片づけ終わりました」

片づけ完了後に引っ越した新居には、シックで機能的なシェルフをお迎えしました/After
片づけ完了後に引っ越した新居には、シックで機能的なシェルフをお迎えしました/After

 あらかじめ部屋のレイアウトを図面にして、入れられる物は収納に詰めて移動。自分のために選んだ家具を置きました。計画的に部屋を整える術は、引っ越しにも生かされました。

 作品づくりもひとつ。母は、幼い頃から彼女をあまり褒めてくれなかったけれど、絵や手芸の作品だけは絶賛してくれました。その影響で、誰かに認められるために頑張り過ぎてしまうと気づいてから、創作と少し距離を置いていました。かつての部屋には創作用のスペースなど夢のまた夢、だったことも理由でした。

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部屋に生まれたスペースは「人生の余白」