<どんな結婚の場合でもその当初には「家庭」をつくるという大きな課題があると思います。(略)こん度の場合、その最初の課題をとびこしてすぐにそれ以上の問題と結びつけてたくさんの期待があるとしたらこわいことだと思います>
この後に先ほど紹介した文が来る。つなげて私なりに翻訳するなら、「皇室に与える影響と言われても困る。『家庭』をつくり、夫を助けるよう努力するのが先決」となる。「こわいことだと思います」という表現で、社会の空気に釘を刺した。正田さん、すごい。
と思ったのは、小室眞子さんのことがあったからだ。その結婚は、皇族の「公」と「私」という問題を提起した。相手の家族の「借金問題」をきっかけに、眞子さんの愛は大きな批判を浴びた。公と私、そのバランスが少しでも崩れたとみなすと、バッシングに転じるのが国民。結果として眞子さんは「複雑性PTSD」と診断された。
結婚前の正田さんは、すでに「空気」との付き合い方を心得ていた、と言ってもよいと思う。もちろん正田さんへの「期待」と眞子さんへの「バッシング」はまるで違う。だがそれにしても、自分の意見を表明する強さと表現の巧みさには感銘させられる。
放送大学教授の原武史さんはこの11月、TOKYO FM「未来授業」に4回出演、「令和の皇室を考える」と題して多面的に語った。初回のタイトルは「眞子さんを追い詰めたもの」。コロナ禍で皇族が直接国民と会えなくなったことが、眞子さんにとって大変な不運だった、と述べた。
お濠の内側に幽閉状態のようになり、国民の考えを実感できないまま、SNSの情報だけが眞子さんの中で肥大化し、それが眞子さんを追い詰めたのではないかと指摘、63(昭和38)年の美智子さまと比較していた。
同年3月、美智子さまは第2子を流産。危機に直面したが、葉山御用邸などでの静養を経て、立ち直る。外に出たからだと、原さん。「皇太子(当時)と地方に出かけ、普通の人たちと対話をし、『手応え』を感じていく。それが大きなきっかけとなった」。眞子さんにはそれがなく、非常に気の毒だった、と述べた。