「鬼」の正体は、苦悩を抱えた人間だった。彼らが生きる「夜」とは、社会の暗部、人の心の闇そのものだ。鬼殺隊の剣士たちは、「夜」を切り裂くために、みずからがその恐ろしい暗闇に足を踏み入れる。鬼殺隊はたとえ自分たちにとって不利な状況であっても、名も知らぬ他人の命を守るために「夜」を駆け抜ける。いつの日か夜が明け、すべての人たちに朝が来ることを願いながら。
◎植朗子(うえ・あきこ)
1977年生まれ。現在、神戸大学国際文化学研究推進センター研究員。専門は伝承文学、神話学、比較民俗学。著書に『「ドイツ伝説集」のコスモロジー ―配列・エレメント・モティーフ―』、共著に『「神話」を近現代に問う』、『はじまりが見える世界の神話』がある。AERAdot.の連載をまとめた「鬼滅夜話」(扶桑社)が好評発売中。