「上弦の参」レベルの鬼ですら、太陽を克服することはできない。この場面以降、さらに鬼が太陽を避けようとするエピソードが繰り返し語られるようになる。

■太陽克服をめぐって

「無限列車編」と「遊郭編」の接続部分のエピソードでは、太陽が鬼の最大の弱点であることから、無惨が太陽克服の鍵になる薬草「青い彼岸花」を探し求め、躍起になる姿が描かれている。「青い彼岸花」の情報収集に猗窩座が失敗したこと、他の命令も完遂できなかったことに、無惨は激しくいら立っている。ストーリーが進むとはっきりするのだが、「青い彼岸花」は、なんと「何百年も」発見されぬままなのだ。鬼たちにとって太陽克服がいかに難題であるのかがわかる。

 太陽から逃亡した猗窩座、太陽克服の契機を何よりも追い求めている無惨。彼らはあれだけ強い肉体を持ちながら、陽の下を歩くことさえできない。

 そうであれば、鬼殺隊はこの鬼の弱点を利用すべきではないのか。鬼の実力者である、十二鬼月(上弦の鬼・下弦の鬼)との戦闘であれば、それを考慮するのは当然のことだろう。だが、鬼殺隊には簡単に日中に鬼とは戦えない理由があるのだ。

■鬼殺隊が日中に鬼と戦いにくい理由

 鬼には知能があり、鬼殺隊が入念に調査をしても、上位ランキングの鬼であればなおさら、その居場所を特定することは難しい。彼らは臆病で、慎重で、負けないための知恵がある。鬼はまさに“神出鬼没”なのだ。

 また、鬼殺隊の主たる戦力は、「柱」と呼ばれるたった9人の剣士たちだ。彼らが広大な範囲の警護・警戒を行っている。よって、鬼の被害が甚大な場所を中心に、柱たちは戦力を割く。鬼は昼間は身を潜めており、また強い鬼殺隊の剣士の気配を感じると、有利な状況でなければ決して出てこない。必然的に「強い鬼」に対峙するためには、夜、鬼が出没しそうな時間帯、目撃情報があった場所で警戒するしかない。あるいは、被害の報告がなされてから、柱を派遣するという後手後手の対応を強いられる。

<私の剣士(こども)たちは 殆どやられてしまったのか そこには“十二鬼月”がいるかもしれない “柱”を行かせなくてはならないようだ 義勇 しのぶ>(産屋敷耀哉/4巻・第28話「緊急の呼び出し」)

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鬼の真価は闇の中で発揮される