今回の作品は全編沖縄言葉での会話劇で、しかもワンセット、ワンシチュエーション。実人生と同じ時間を、70年代の沖縄人として生きなければならない。

「よほど実感がないと沖縄の人にはなれない。怖い怖い! ただ、沖縄の方言には魅力的な言葉がたくさんあります。“ワジワジする(腹が立つ)”とか“あきさみよ~(あらまあ)”とか」

 今回、舞台の出演を決めた理由のひとつに、以前から、沖縄に不思議な縁を感じていることもあった。

「お仕事もなぜだか沖縄を舞台にした作品が多く、『Aサインデイズ』『ホテル・ハイビスカス』『ちゅらさん』などたくさんあります。私の父は台湾人で、食生活も沖縄の食文化に近かったです。沖縄に行くと、食べものの匂い……とくに炒め物の油の匂いなんかには懐かしさを感じます。台湾のお墓も沖縄と同じで、大きなおうちみたいな形をしていますし、沖縄を訪れるたびに、すごく居心地の良さを実感します」

(菊地陽子、構成/長沢明)

余貴美子(よ・きみこ)/1956年生まれ。神奈川県出身。86年「東京壱組」を経て、映画、ドラマへと活躍の場を広げる。2008年「おくりびと」、09年「ディア・ドクター」で日本アカデミー賞最優秀助演女優賞を2年連続で受賞。19年に紫綬褒章を受章。近年の舞台主演作に07年「錦繍」、15年「三人姉妹」がある。出演映画「ノイズ」が22年1月28日公開。

>>【後編/俳優は老化をデザインする仕事 余貴美子が語る“心のリフトアップ”法】へ続く

週刊朝日  2022年1月7・14日合併号より抜粋

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