舞台演劇から俳優のキャリアをスタートさせた俳優・余貴美子さん。若い頃は怖いもの知らずだったが、ライブの怖さに気づいたとき、舞台から離れた。そんな余さんがこの冬、7年ぶりに舞台に立つ。
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撮影のときに身につけていた革ジャンに印象的なプリントのTシャツ、光沢のあるパンツが、とてもよく似合っていた。「自前ですか?」と聞くと、「いいえ」と答える。
「スタイリストさんに用意していただいたものの中で、そこにいた人たちみんなが、これがいちばん私らしいと言うので選びました。普段はこんな格好してないんですけど、私ってこういう人に見えているのかしら? 長く生きていても、一番の謎は自分ですね」
そう言って、ニッコリと微笑んだ。
年が明けてすぐ上演される、栗山民也さん演出の舞台「hana-1970、コザが燃えた日-」に出演する。2022年、沖縄は本土復帰50周年を迎える。舞台は、返還直前の沖縄で激動の時代を生きたひとつの家族の物語。余さんは、Aサインバー「hana」を営む“おかあ”の役だ。
「舞台は7年ぶりですが、正直言うと、もう舞台には一生立たないかもしれないと思っていました。私は、1975年に、六本木にあったそれはそれは小さい劇団『オンシアター自由劇場』から、俳優の仕事を始めました。でも、やればやるほど、舞台に立つのが怖くなってしまったんです。若い頃は、根拠のない自信で『なんとでもなる!』『何にでもなれる!』なんて思っていましたけど、それがだんだん、『何かしでかすんじゃないか』と臆病になっていった。映像は、『やり直させてください』と言えますけど、舞台はできないですから……。ただ今回は、栗山さんがずっと思いを寄せていらした沖縄のことが題材だということで、『これが最後のお務め』と、思い切ってお引き受けすることにしたんです」
栗山さんとは3回目のタッグになる。
「前回は日生劇場の『バルセロナ物語』という舞台で、1991年でしたから、もう30年前です。そこで私もフラメンコを踊ったり歌ったり。その前が……中世を舞台にした作品で……ダメですねぇ。とんと作品名が出てこない(笑)。1989年あたり、『The Art of Success』! 思い出せてよかった」