「これはあくまで法科大学院の“修了者”を対象とした数字です。東京大は法科大学院在学中に予備試験に合格して司法試験受験資格を取得し、退学または休学する学生が少なくありません」

 文科省は各法科大学院の退学者のうち、「司法試験予備試験合格の資格により司法試験を受験し合格が理由の者」を集計している(「令和2年度法科大学院関係状況調査」。数字は2019年度)。これによると、東京大の退学者は45人。つまりこれだけの人数が法科大学院在学中に予備試験を突破し、司法試験に合格したというわけだ。これは全法科大学院中1位の数字だが、同項目において2位の京都大は9人、3位の慶應大は8人。東京大は群を抜いている。

「そう考えると、むしろ、東京大の法科大学院は充実した講義を展開しているとも言えます。退学者や休学者の合格者数も含めれば、東京大が停滞しているわけではないと考えられます」

■司法試験は今や「狙い目の資格」?

 司法試験の受験者数は減少傾向にある。ピークは2011年の8765人。21年は3424人で、10年前と比べると4割以下に落ち込んでいる。ただし、1500人以上の合格者を出すという方針はここ数年変わっていない。近年の合格率は約40%で、ある意味「狙い目の資格」になってきたとも言える。

 司法試験の合格を目標に掲げた際、重要になるのがゴールから逆算した学びだという。奈良さんはこう話す。

「最短であれば大学時代に予備試験と司法試験に合格するのが理想でしょう。そのためにも、大学1年生から勉強を始めるなど、早めにスタートするのに越したことはありません。たとえ合格しなくとも、大学時代に予備試験を受けることで、そこに照準を合わせて仕上げる経験がその後の司法試験受験で必ず役立ちます」

 もともと経済的救済措置として始まった予備試験制度だが、法科大学院ルートよりも早く、学部生の間に司法試験に合格することも可能な制度のため、優秀な学生は次々と同制度を活用。それゆえ一部の法科大学院では学生を集められず、定員割れを起こして募集停止するところも相次いでいる。教育関係者からは「法科大学院制度の失敗」も指摘されている。

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「自分一人の力で受験勉強に取り組む」東大