※写真はイメージです
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◆自費サービスは高額のみならず

 母が危篤状態に入ったと看護師から連絡を受けて駆けつけたAさんと家族、看取り士が見守る中で、Aさんの母は静かに息を引き取った。その後、看取り士から「体が温かいうちに、優しくさすって、抱きしめてあげてください」「遺体が温かいうちは、故人のエネルギーを受け取り、故人を労う大切な時間です」と言われ、涙ながらに時間をかけてお別れをした。

 葬儀を終え、母がお骨となったとき、そのお別れの時間を思い出しては、「あのときしっかり抱きしめて感謝を伝えられて、本当に良かった」と実感したという。

「人を看取るという経験をしたことがないと、人が死ぬときにどんな状態になるのかもわかりません。臨終前に母の呼吸が変わってきた時点で、私一人ならパニックになっていたと思いますが、“看取りのプロ”の落ち着いた対応や『こういうふうにしてあげてくださいね』という声がけによって、私も家族も落ち着いて“その時”を迎えられたと思います」(Aさん)

 在宅死を支えるベースとなるのは、介護保険サービスの対象となる訪問医療や訪問介護だが、看取り士の派遣など、介護保険の対象とならない自費でのサービスを加えることで、在宅生活の満足度がぐっと高まることもある。

 現在では、利用者の多様なニーズに対応するために、一人ひとりの要望に合わせ、介護保険内と介護保険外のサービスを組み合わせたプランを提案する「選択的介護(混合介護)」と呼ばれる仕組みも、一部自治体でモデル事業としての取り組みが始まるなど、少しずつ整備が進められつつある。自費での介護保険外サービスというと、高額な費用がかかりそうに思うが、必ずしもそうではない。

 例えば冒頭のAさんが依頼した看取り士も、介護保険の対象とならない自費サービスだが、契約料の1万1千円と臨終時の3時間程度の付き添いであれば、合計3万7千円程度で済む。

 もっとも利用者が多いという1カ月の基本プランでは、1日5時間・月90時間まで、エンゼルチームと呼ばれる“看取り士の卵”によるボランティアの見守りがつき、看取りのサポート全般を担う内容で、月11万円かかる。看取り士の契約は、終末期に入った段階で依頼する人がほとんどであるため、契約してから1カ月以内で亡くなる人が多いという。看取り士は、自宅での看取りを支えることがほとんどだが、病院や施設でのサポートもできる。看取り士派遣サービスは、全国各地に29カ所ある拠点を中心に広がっており、現状では東北地方を除き、各地方への派遣も可能だ。

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