利用者に寄り添う看取り士(写真提供=日本看取り士会)
利用者に寄り添う看取り士(写真提供=日本看取り士会)
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 看取り士の派遣など、介護保険の対象とならない自費でのサービスをプラスすることで、在宅療養の満足度が高まることもあるという。訪問医療や訪問介護がベースとなるのは変わらないが、どのような場合に自費サービスを考えればいいのか。

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「看取りについて、ちゃんとわかっている人がそばにいることの安心感は、とても大きかった」

 こう話すのは、2年前に母を自宅で看取ったAさん(64)。末期がんで余命宣告を受けた後、「最期は自宅で過ごしたい」という母の希望のもと、自宅での療養生活がスタートした。余命宣告を受けた母のそばを片時も離れたくはなかったが、Aさんは自営業で飲食店を切り盛りしており、一日中家にいることはどうしても難しい。

 帰宅が深夜になる日も多く、特に夜間が心配だった。在宅療養生活は、在宅医を中心に、ケアマネジャーや看護師、ヘルパーなどが訪問して支えてくれるが、常に自宅で見守ってくれるわけではないため、母が一人の時間に何かがあったらと思うと不安だった。

 そこで「急な変化が起こったときのために」と、自費で依頼したのが看取り士の派遣だ。看取り士とは、一般社団法人日本看取り士会が認定する民間資格で、看取りのサポートを行う人のこと。家族や医療機関などと連携しながら、最期を迎える看取り全般を支える。

 Aさんが看取り士に依頼してから、母が亡くなるまでの期間は約1週間。看取り士とボランティアスタッフで構成されるチームは、契約した日の夜からAさんの母に付き添い始め、シフトを組んで24時間態勢で見守った。看取り士は、医療行為や介護はできないが、そばで見守ることが大きな仕事の一つだ。

 優しく声をかけ、体に手を添えて「大丈夫ですよ」と繰り返す。他愛ない話にも寄り添い、話し相手になることもサポートの一つだ。訪問看護や訪問介護では、「話し相手になってほしい」といった要望や「不安だからそばにいてほしい」という依頼には十分に対応できない。最期が近づくにつれ膨らみがちな不安や心細さにも、しっかり寄り添うことが看取り士の仕事だ。

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松岡かすみ

松岡かすみ

松岡かすみ(まつおか・かすみ) 1986年、高知県生まれ。同志社大学文学部卒業。PR会社、宣伝会議を経て、2015年より「週刊朝日」編集部記者。2021年からフリーランス記者として、雑誌や書籍、ウェブメディアなどの分野で活動。

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