坪井安奈さん (本人提供)
坪井安奈さん (本人提供)
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 時につらくもある受験勉強。どう乗り越え、経験を生かしているか、活躍する先輩たちに聞いた。

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「受験は自分のモチベーションやパフォーマンスの上げ方を学ぶとてもいい機会でした」

 坪井安奈さん(33)はこう振り返る。タレントとして情報番組などに出演するかたわら、複数の企業で広報や編集の仕事を請け負う、いわゆる「複業ワーカー」。「一つのことをずっと続けているとモチベーションが持たない」と話す。その特性を自覚するきっかけが受験だった。

 出身は滋賀県湖南市。母は小学校の教員で教育熱心だった。県内でトップの公立高、膳所(ぜぜ)高校を目指して中学1年から塾に通うも、結果は不合格。「敗因は『電池切れ』。1年生からエンジンを入れた結果、受験本番の1、2カ月前には燃え尽きて頑張れなくなっていたんです」

 反省を生かし、大学受験では「高校3年から勉強に本腰を入れる」と決意。1、2年は校則で禁止されていたピアスを開けたり、アルバイトをしたりと高校生活を謳歌(おうか)した。3年になると自分に「恋愛禁止」を定め、夏休みには塾の自習室で1日約12時間を勉強にあてた。

 第1志望の大阪大学には惜しくも手が届かなかったが、慶應大学総合政策学部に合格する。アナウンサーになりたいと、在学中からローカルテレビでリポーターの仕事を始めた。ゼミでは、自身の出演番組を素材に表情や相づちの数、バリエーションを分析していたという。

 テレビ局を目指して就職浪人するうちに制作の仕事に関心が移り、卒業後は出版社へ。週刊誌の編集者として芸能人のインタビューやスクープページを担当した。転機は25歳の誕生日。職業が一つであることに疑問を抱き、「ゼロからやり直せるならタレントにも挑戦したい」と退職した。

 タレント・広報・編集の「一人三役」をこなす利点を、こう話す。

「編集の仕事をしていると、出演者に『こう動いてほしい』と思うことがある。編集経験があると、タレントの仕事をするときにも編集側の意図を想像しやすい。編集者とタレント、両者の視点をどちらの仕事にも生かせるんです」

 失敗や試行錯誤を経て、自身に合った勉強や仕事のスタイルにたどり着いた。「周りに合わせて勉強するのではなく、自分が試験に全力で臨める環境をどう作り出せるか考えてみてほしい」と、受験生にアドバイスを送る。(本誌・松岡瑛理)

週刊朝日  2022年2月4日号