東京都千代田区の観光アンバサダーとして、神田明神前にある甘酒の老舗・天野屋を取材中(写真=倉田貴志)
東京都千代田区の観光アンバサダーとして、神田明神前にある甘酒の老舗・天野屋を取材中(写真=倉田貴志)
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「職業はドイツ人」を名乗るマライ・メントライン。幼い頃に見た絵本でアジアに興味を持ち、民族博物館で日本の文化に引かれた。16歳になると、日本の高校に留学。2008年から本格的に日本に住むと、日本語もドイツ語もできることで、通訳、翻訳以外にもさまざまな業界から声がかかる。日本のサブカルやエンタメも大好き。マライ・メントラインを通して見る日本は、新しい魅力であふれている。

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 コロナ禍の中で開催された「東京2020オリンピック」は、関心のある人にとってもない人にとってもストレスの多い大会だった。緊急事態宣言下の無観客での開催は、五輪にしかない祝祭性をとうに失わせていた。国際オリンピック委員会(IOC)会長のトーマス・バッハによる数々の無神経な発言と行動は、さらに日本人のストレスを倍加させていたように思う。

 その時期に読んだある文章が私の目を引いた。ドイツ第2テレビ局「ZDF」の契約プロデューサーとしてドイツ向けのオリンピック報道にあたっていたマライ・メントライン(38)が、「“ぼったくり男爵”バッハ会長に日本在住ドイツ人も『マジ迷惑してます』」という刺激的なタイトルでWebマガジンに寄稿した一文である。

「IOCのトーマス・バッハ会長は、そのあからさまな無神経発言によって、東京オリンピックの『公式悪役キャラ』の座をゲットしたといってもよい存在です」(「女子SPA!」から)

「公式悪役キャラ」という表現に思わず噴き出したが、文中では欧州の伝統的階級社会をのし上がろうとするバッハ会長の野心、パワーの源泉などを同国人として細かく分析、「図々しさと悪びれなさと無神経さがハンパない」と喝破し、爽快だった。多角的な情報収集力と客観的な眼差し。「久しぶりにマライさんに会いたい」と思った。

ZDFのオフィスで。以前は通訳として働いていたが、能力を認められてスカウトされた。もともと映画好きということもあり、観光アンバサダーの仕事では自分で撮影・編集することも楽しんでいる(写真=倉田貴志)
ZDFのオフィスで。以前は通訳として働いていたが、能力を認められてスカウトされた。もともと映画好きということもあり、観光アンバサダーの仕事では自分で撮影・編集することも楽しんでいる(写真=倉田貴志)

 久しぶりと言っても、親しくつきあったことはない。2014年の1月、知り合いの編集者に誘われて何人かで夕食を共にしたとき、たまたまそこにマライがいたのである。不自由なく日本語を話す彼女から渡された名刺には、「ドイツのことならまかせてください」という言葉が添えられていた。ゲームやアニメなど日本のサブカルに強く、一方でドイツのミステリー小説や映画などのエンターテインメント作品を日本に紹介することにも力を注ぐ。日本人の心理に通じた数少ないドイツ人として、通訳やコーディネーター、ドイツ語講座番組に出演。他にもワイドショーのコメンテーターなどあらゆる仕事をしてきたといってもいい。ツイッターでは論理的かつひねりのきいた言葉をつぶやき、3万7千人ものフォロワーを集める。

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