「夫は私に本を書いてほしいと思っているけど自信がなくて」というマライ。だが子ども向けの短編小説を雑誌で発表したこともあり、少し前向きに考え始めた(写真=倉田貴志)
「夫は私に本を書いてほしいと思っているけど自信がなくて」というマライ。だが子ども向けの短編小説を雑誌で発表したこともあり、少し前向きに考え始めた(写真=倉田貴志)

 それが夫となる神島大輔(51)だった。神島はワセダミステリクラブのOBで、サブカルオタク、軍事オタク、歴史オタクでもある。議論好きな神島は初対面のマライにも議論を吹きかけてきた。

「その時は『エヴァンゲリオン』の話で盛り上がりました。あれって西洋哲学や宗教哲学の表面的な要素を借りている部分も多いんですが、『ヨーロッパ人はそこのところを深読みしすぎるんじゃないか?』とか。交流会だとハードコアな話をするのも限界があったので、別途二人だけでやろうぜという話になりました。オタク的なところが一致しちゃったんですね」(神島)

 後日、改めて早稲田の喫茶店で待ち合わせたが、閉店までの11時間ずっと「エヴァ」の話で盛り上がったという。翌年夏に帰国する頃には結婚の約束をしていた。日本とドイツの遠距離恋愛はスカイプなどで乗り切った。マライは08年にボン大学を卒業すると9月に再来日。10月に結婚した。

 12月にはNHKのオーディションを受け、「テレビでドイツ語」への出演がスタート。番組内では特に日本語を使うことはなかったが、局内で「マライは日本語の文章も書ける」と評判になって翻訳を頼まれるようになった。それがやがて通訳などの仕事へとつながっていく。英語と違い、ドイツ語ネイティブで日本語も使える人材はそれほど多くない。翻訳・通訳という枠には収まらない細かな仕事もこなすうちにどんどん応用力がついた。さらに大きな仕事が彼女に与えられるきっかけとなったのは、皮肉なことだが東日本大震災である。

(文・千葉望)

※記事の続きはAERA 2022年2月7日号でご覧いただけます。

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