フリーの2日前の8日、男子SPの結果も1位。世界最高記録という結果を出し、圧倒的な強さを発揮した。SPでは昔の恋人を懐かしむ、シャンソンの名曲「ラ・ボエーム」を踊った。
「4回転─3回転の連続ジャンプを跳んだところまでは柔らかくてすごくいいと思っていました。その後、ジャンプを全部キメたことで、しっとりとした曲調なのに、演技ではない気持ちのたかぶりが見えた。それだけが残念でしたが、デキとしては素晴らしかった」
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さて、今回の五輪を振り返ると、今やクワッド(4回転)を跳ぶのが当たり前の時代となった。フリーの演技では、ネイサン選手と宇野選手がクワッドを5本、鍵山選手が4本、羽生選手も4回転半を含む4本。
吉岡氏は世界のスケーターの現状をこう話す。
「北京後ということを考えると、鍵山、宇野がクワッドを5種類5本に増やすなどを目指すでしょう。それでも勝負がつかなくなってきたら、4回転半という話になって来る。そして4回転半を跳べるスケーターが3人、4人と出てきた時、さらに上回ろうと5回転に挑戦するようになるでしょう」
とはいえ、5回転時代の幕はまだ開いていないという。
「5回転ジャンプが国際スケート連盟の採点表に乗るようになるにはもう少し時間がかかるでしょう。羽生が4回転半の可能性を見せたことで、5回転時代のドアの鍵のありかが分かったくらいにはなりましたね」
羽生選手はまだまだ挑戦できそうな気もする……。
「どうなんでしょうね。世界選手権でもう一度4回転半に挑戦するのか、それともこれで引退してしまうのか」
最後に、男子SP、フリーの全体を通して、こう総評した。
「レベルは上がってますね。ただ、オリンピックのフリーは難しい。今回のフリーの演技で、上位でも完璧に演技できた選手がいなかった。ああ、これがオリンピックなんだなという感じはしましたね」
(AERAdot.編集部 上田耕司)