「鳥栖は昔から鶏の飼育が盛んで、来客があると、飼っている鶏を絞めてもてなしていました。『肥前国風土記』によると、応神天皇の頃(古墳時代)には朝廷に鶏を献上していたそうです。この辺りの食文化に基づいた弁当だったので、地域の人たちに受け入れられ、支えてもらったと思います。九州各地で鶏肉が好まれていましたので、旅行が盛んになるにつれ、鳥栖で食べたかしわめしがおいしかったという方が増え、自然発生的に各地で作られるようになったんじゃないでしょうか」
現在、同社を含め各社のかしわめし駅弁には、鶏肉と錦糸卵、海苔の3種がのるのが定番となっている。
「卵がのるようになったのは、かなり後のことだと思います。昭和30年代の写真には3種がのっていますが、この形になったのがいつかははっきりしません」
各地で長い間愛され続けてきた駅弁。コロナ禍で旅行はおろか催事まで中止が相次ぐが、一刻も早く旅の友として「百年駅弁」を食べたいものである。(本誌・菊地武顕)
※週刊朝日 2022年2月18日号