相続に詳しいファイナンシャルプランナーは言う。
「お金が絡む相続は一筋縄ではいかないことが多く、揉めそうな人ほど早めに対策をするに越したことはありません。ワケあり人生を送る人たちの相続対策は一見レアケースに思えるが、法律的な知識など学ぶことは非常に多いのです」
そこで、とりわけワケありの人の相続事例を取り上げ、専門家からアドバイスをもらった。今回は「艶福家の父には愛人や婚外子?」と疑うケースについて。
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都内在住のパート女性Cさん(40代)の父親は、10年ほど前まで飲食店を経営していて羽振りが良かった。ただ、以前から自宅には寄り付かず、80代後半になる今も20歳近く年下の愛人と別宅で同居中だ。自宅には70代の母親が一人で暮らしている。
父親は別宅のほかにも賃貸物件を保有し、株式投資で数千万円を動かしていると話していたことがあり、Cさんは、父親の総資産は恐らく数億円に上るのではないかと見ている。Cさんには50代の専業主婦の姉がいるが、Cさん一家も姉一家もコロナ禍で大幅に収入が減り、さらにこれから子どもの教育費もかかることから、縁の薄い父親の財産でも「もらえるものはもらいたい」のが本音という。
それだけに気になるのが、愛人や婚外子の存在だ。父親が婚外子を認知したという話は聞いていない。しかし、母親によると、「以前愛人だった女性が幼児を連れているのを見かけたことがある」という。
家族の感情としては、愛人や婚外子には父親の遺産をビタ一文渡したくない。母親、姉、Cさんが万が一のときに父親の遺産をきっちり受け継ぐために、今からどんな対策が可能なのか。
「仮に父親が亡くなったり、認知機能が低下したりするようなことがあれば、Cさんたち法律上の家族は父親の財産を確認することができる。しかし、父親が健在なうちは勝手に調べるわけにはいかない」(『ぶっちゃけ相続』[ダイヤモンド社]などの著書で知られる、円満相続税理士法人統括代表社員・税理士の橘慶太さん)
逆に、父親のほうは家族に黙って愛人に生前贈与をすることも、遺言書を書いて財産を残すこともできてしまう。
Cさんや母親が相続についての希望を伝えても、それを了承するかどうかは父親次第。相続に詳しいファイナンシャルプランナーは、「疎遠だった父親との関係を見直し、親子で相続について話し合えるように努力すべき。そうした過程で父親から財産や婚外子の話を引き出せれば、対策の余地が生まれる可能性もある」とアドバイスする。(ライター・森田聡子)
※週刊朝日 2022年3月4日号より抜粋