「四苦八苦して父が遺した株式の名義を母に書き換えたところで母が亡くなりました。今度は母から自分への、同じ書き換え手続き……。こんなことなら、最初から私の名義に変更すればよかったと後悔しました」
財産相続と死後事務
父から母への名義変更を自力でやって疲れたため、今度は司法書士に頼むと、数十万円の費用がかかった。「司法書士費用は、ようやく自分のものになった株券の含み益を上回る出費だった」そうで、まさに骨折り損のくたびれ儲けである。
「リモート終活」チェックリストの作成に協力してくれた、三井住友信託銀行個人企画部主任調査役の田村直史さんは、こう説明する。
「まず親御様の没後には2種類の手続きが発生します。『財産の相続』と『死後事務手続き』です」(田村さん)
チェックリストでいえば親の「資産編」に挙げたものが財産の相続に関連する。法律上、相続財産の処分または引き継ぎは、法定相続人全員で遺産分割協議を行うのが原則だ。
「マイカーの相続でも車検証、実印、印鑑証明とともに、遺産分割協議書を提出する必要があります。廃車にする場合も、いったん誰かが相続したうえでの手続きになります」(同)
銀行の現金や株式などの有価証券、不動産など金融資産のリスト化もお願いしておきたい。それが無理なら「どの銀行や証券会社を使っているか」をあなたが把握するだけでもOK。既に使っていない、でも数千円だけ入っているような金融機関を持っていたら、今のうちに閉じてもらう。
なお、国は証券会社などにある金融資産をマイナンバー(個人番号)でヒモ付けしている。
貴金属・骨董品も火種
親の所有財産について、根掘り葉掘り聞き出すことに抵抗を感じる人も多いはず。そのような場合は「実は同僚の○○さんの父親が亡くなって……」などと身近な話に置き換えつつ、先に取り上げたような苦労話を聞かせてみる。そういった話もしづらいようなら終活の記事が載った雑誌を見てもらうことや、終活に関するオンラインセミナーに参加してもらうことも意外に効果的だという。