AERA3月7日号より

女性に偏る家事の負担

 日本はOECDのなかで人口当たりの病床数は最も多いが、人口当たりの医師数は6番目に低い。外科医で漫画家のさーたり医師(44)も、こう語る。

「今は病院に配属される全員が休まず長時間勤務できると想定されています。ただ、それだと立ち行かなくなる。女性だけを増やせばいいというものではないと思います。女性が多い診療科でも、人手不足ゆえに産休・育休は順番に取らなくてはならない空気感があります」

 根強い性別役割分業意識もある。保団連が昨年、開業医に調査したところ(医師1356人が回答)、男性医師と女性医師で実労働時間に差はあまりなかったが、平日に2時間以上の家事・育児・介護をするのは女性医師が45.2%なのに対して、男性医師は5.7%にとどまった。男性医師の46.6%が、家事は30分以下だった。夫婦ともに医師・歯科医師に限っても、女性のほうが家事の時間は長かった。保団連女性部長の齊藤みち子医師はこう話す。

「家事の負担が女性に大きく偏っている現状では、女性医師は仕事を制限するか、二重負担に耐えるかの二者択一になります。結果として女性医師の時短勤務や退職が多くなれば、現場が回らなくなり、女性差別が復活してしまう恐れもあります」

(編集部・井上有紀子)

AERA 2022年3月7日号より抜粋

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