カミラ夫人と不仲だとされるメーガンさんは、渡英した際にどうあいさつするか注目される(photo Getty Images)

■スキャンダルと無縁

 そうした国民のカミラ夫人への嫌悪感を考慮して、再婚の際には将来は「王妃」を望まないとしたはずだった。再婚で皇太子妃になっても、「プリンセス・オブ・ウェールズ」を名乗ることも国民感情が許さなかった。称号は「コーンウォール公爵夫人」で折り合いをつけた。

 したがって今回の女王の「希望」に国民は戸惑った。「愛人カミラ夫人がクイーンまで上り詰めるとは信じられない」「ダイアナ妃があまりに気の毒だ」と嘆いた。

 しかし、女王の決定ならばと、驚きと失望をのみ込もうとした。チャールズ皇太子とカミラ夫人は、女王に感謝する声明をさっそく発表したのだった。

 その後、カミラ夫人を擁護する風が吹き始めた。再婚から17年が経つが、この間、カミラ夫人はスキャンダルと無縁だったと強調された。家庭内暴力の被害者支援をする慈善団体や子どもたちに読書を勧める組織などのパトロンとなり、地道に活動した。国民を刺激しないよう、いつも控えめだった。夫人の友人らからは「ユーモアのある、心温かい人」とのコメントが寄せられた。デイリー・メール紙が行った王室についての調査では、カミラ夫人が王妃になることを支持する割合が、かつては10%台だったのが55%と跳ね上がり、反対する28%を大きく上回った。やはり女王のお墨付きが効いているのだろう。しかし、ダイアナ妃とカミラ夫人ではどちらがよい王妃になると思うかの問いには、ダイアナ妃が58%でカミラ夫人はわずか16%だった。

英国君主として初めて在位70年を迎えたエリザベス女王は、6月に祝賀式典が予定されている(photo Getty Images)

■女王の判断を支持する

 国民が固唾をのんで待ったのが、ウィリアム王子(39)の反応だった。王子の母思いはよく知られている。「今でも母のことを思い出さない日は一日もない」と発言したこともあった。王子が小さいころ、皇太子がカミラ夫人のもとに行った夜、トイレですすり泣く母にドアの下からティッシュを差し込み、「もう泣かないで。僕がいるから」と慰めた。王子はクイーン・カミラになんとコメントするだろうか。

 王子はキャサリン妃(40)とともに「女王の判断を支持する」と発表した。王子は幸せな家庭生活のなかに、15歳で母を失った悲しみを昇華させたのだろう。自分が将来、国王になる自覚と責任からの判断かもしれない。かつて王子は、「カミラ夫人は父を幸せにしてくれる」と発言したこともあった。スキャンダル続きの王室では、スムーズな継承のため見通しを明確にしておくことが必要だ。女王のプラグマティック(実利的)な決定を評価してのことに違いない。(ジャーナリスト・多賀幹子)

AERA 2022年3月7日号より抜粋

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