中村医師は言う。
「大事なのは、本人の気持ちにできるだけ寄り添い、考えていることを理解しようと努めること。急に怒りっぽくなった、沈みがちになったといった変化の裏には、本人なりの理由があるものです」
できるだけ病気になる前の普段の生活を送るほうが、お互いにとって心地よく過ごせるはずだ。その上で家族が心がけたいのは、患者に対する精神的なサポート。医師や看護師、ヘルパーなども精神的なケアを行うが、家族のフォローにはかなわない。本人が自宅で過ごすことを決断したら、家族は本人の意向や発言を尊重するようにしたい。
「家族が決めず、本人の意思で過ごし方を決めていけることがベスト。家族は無理に何かしなくてはと思う必要はなく、できる限り本人のそばにいることが何よりの精神的なサポートになります」(中村医師)
残された時間の中で、患者本人の希望をかなえられたら、家族にとっても大きな達成感になる。本人は自分の意思をはっきり伝え、家族は自分たちで判断せずに本人の意向にできる限り寄り添うこと。これができれば、きっと満足いく在宅生活が送れるはずだ。(フリーランス記者・松岡かすみ)
※週刊朝日 2022年3月11日号