※イラストはイメージです
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 点滴や経管栄養についても、ある時期を乗り越えたら状態が再び良くなるということなら頑張ればいいが、そうではないステージに入ったときには、かえって苦痛の原因になることがある。少量の点滴が脱水を改善して体調を一時的に良くすることがあっても、あまり過剰な点滴は痰を多くし、むくみを増し、余計に本人を苦しめることがある。

「家族が“頑張ってモード”になると、つらくなるのは本人。“頑張ればもう少し良くなるのでは”という願望を、死にゆく人に押し付けるのは酷です。家族が来たる死を受け入れさえすれば、本人は肩の荷が下りて楽になれることもあるのです」(前出の大軒さん)

 一方で、家族が自分を犠牲にしなくてはならない状況では、お互いが苦しくなってしまう。在宅医療を選択すると、家族は「頑張って自分たちでサポートしよう」と気負いがちだ。だが完璧を追い求めると、だんだんと余裕がなくなり、家族から笑顔が消えてしまうこともある。冒頭のAさんの妻も、「自分の時間がないと優しくできないこともあるから」と、習い事は休まず通っていた。

 終末期の患者にとって、そばにいてくれる家族の笑顔は何より欠かせない。家族に余裕がなくなることで、患者も「自分のせいで、家族に無理をさせている」という罪悪感を抱くことになる。年間100人以上の看取りを支える在宅医療専門医の中村明澄医師(向日葵クリニック院長)は言う。

◆なるべく普段の生活を心がけて

「家族はサポートする上で、完璧は目指さなくていい。それより“心地よさ”を目指して、“相手がしてほしいこと”の中から“自分ができること”を無理なくやればいいのです。訪問介護や訪問看護をうまく使いながら、生活を犠牲にしないサポートを心がけて」

 時に穏やかではいられない日も訪れるかもしれない。病人の多くは、刻々と症状が変化していく中で「これしか食べられない」「これしか動けない」という自身への苛立ちや絶望感を抱く。同時に家族や周囲の人に「迷惑をかけて申し訳ない」という気持ちも募らせていく。その気持ちの揺れが、思いがけない怒りとなってあらわれたり、家族に八つ当たりしたりするような行動になることもある。また、家族や周囲の何気ない一言に傷つくケースも少なくない。

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