ヤンキース史上でも屈指のフランチャイズプレーヤーであるデレク・ジーターが1995年にデビューした際、本拠地初戦を前にモンテル・ジョーダンの『ディス・イズ・ハウ・ウィ・ドゥ・イット』を登場曲としてリクエストしたのは当時としては異例だったが、今では選手自ら選曲するのが当たり前になっている。ただし、音楽に対してこだわりの強い選手ほど頻繁に曲を変えるため、そうなるとホフマンやリベラのように長きにわたって“代名詞化”するのは難しくなる。

 日本人選手では、マリナーズで現役だった当時のイチローが石川さゆりの『天城越え』を選曲したことがあり、田中将大(現楽天)は自らファンと公言するももいろクローバーZの曲を、ヤンキース時代も使い続けた。昨年はロサンゼルス・エンゼルスの大谷翔平が、TVアニメ『呪術廻戦』のエンディングテーマである『LOST IN PARADISE feat. AKLO』を打席に入る際の登場曲にしていたのも、記憶に新しいところだ。

 もちろん海外でプレーしているのだから、現地で流行している曲を出囃子にするのもいい。それでもジャンルを問わず、日本とゆかりのある曲がメジャーリーグの球場で流れるのは、日本人としてはどこか嬉しいものがある。

 今年は鈴木誠也がポスティングによるメジャー移籍を目指しているが、昨年は広島でBTSやサンボマスターなどの曲を出囃子にしていた彼は、今度はどんな曲で新たな舞台に挑むのだろう。メジャーリーグは現在、昨年12月から続く労使交渉がまとまらず先の見えない状況にあるが、鈴木の新たな登場曲を聞ける日が少しでも早く訪れることを願うばかりだ。(文中敬称略)

(文・菊田康彦)

●プロフィール
菊田康彦
1966年生まれ。静岡県出身。大学卒業後、地方公務員、英会話講師などを経てフリーライターに転身。2004~08年『スカパーMLBライブ』、16~17年『スポナビライブMLB』出演。プロ野球は10年からヤクルトの取材を続けている。

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