◆神保町・ラドリオ
ウィンナーコーヒー発祥の隠れ家的サロン

店内は奥まで続き、内装は椅子も含めて開店当時のまま (撮影/写真部・高野楓菜)

 本の街・神保町の路地裏にひっそり佇むラドリオは1949年の開店。店の名はスペイン語でレンガを意味する。

「島崎書店」を経営していた創業者がサロンとして始めたこともあり、作家や学生が集い熱い議論を戦わせた。作家の逢坂剛氏は中央大学の学生時代から訪れているそうだ。

ウィンナーコーヒーと本日のケーキ(はちみつ)のセット800円 (撮影/写真部・高野楓菜)

 ラドリオはウィンナーコーヒーを日本ではじめて出した店でもある。常連だった東大教授がウィーンを訪れた時に飲んだ白いものがのったコーヒーの話が発端。ウィンナーとは包むという意味で冷めないようにするため。

「『昭和の喫茶店』という雰囲気がSNS映えする、と明治大学など、学生客が増えていますね」と店長の篠崎麻衣子さん。包まれるような安らぎが、愛される理由のようだ。

赤いレンガのファサードが印象的。この一角は時間が止まったよう (撮影/写真部・高野楓菜)

住所:東京都千代田区神田神保町1-3/営業時間:11:45~21:00(平日)、12:00~19:00(土日)定休日:祝日

◆本郷・喫茶ルオー
全学連の議論も今はなく静かに時が過ぎていく

創業以来変わらぬセイロン風カレーライス(セミコーヒー付き)1000円 (撮影/写真部・松永卓也)

 東大の正門前に立つ瀟洒(しょうしゃ)な2階建ての喫茶店。

「もともとは1952年に、本郷三丁目駅と赤門の間に画廊喫茶として開店したんです。120席もある大きな店で、木下順二さんなど演劇関係者がよく利用されていました。学生運動が盛んだったころは全学連のたまり場で、暖炉の前で議論していました。80年にそこを画材店とし、喫茶店がこの場所に移ったんです」

 と、店主の山下淳一さん。

 時代も反映してのことだろう。移転してからは、学生たちの侃侃諤諤(かんかんがくがく)とした議論はほとんどなくなった。落ち着いていいといえばいいのだが、少々寂しい感じもするそうだ。

 本郷に来るたび、東大がよく見える窓際の席でゆっくりコーヒーを飲む卒業生も多いという。

1階の窓からの眺め。道路越し、やや左側に東大正門が立っている (撮影/写真部・松永卓也)

住所:東京都文京区本郷6-1-14/営業時間:9:30~20:00(土は~17:00)/定休日:日祝日

(取材・文/菊地武顕、鮎川哲也、本誌・鈴木裕也)

週刊朝日  2022年3月25日号

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